熊本県で台湾の半導体大手TSMCの工場が開所しました。
TSMC熊本本体だけで従業員が1700人ということです。周辺には多くの関連企業も進出することから、地域全体では4000人の新規雇用になるそうです。さらに、佐賀県や長崎県などシリコンアイランド九州全体では、さらに数倍の新規雇用が見込まれそうです。
元の会社で働き始めていた頃のことを思い出しました。
現在は宇部市になっている旧厚狭郡楠木町(当時の人口は7千人余り)に、半導体製造のNECが山口日本電気を設立して工場が操業を開始したのが1985年です。
私は隣接する小野田市(現在は山陽小野田市)の工場の製造部門のスタッフでした。
当時、工場には約200人の社員と合計70人ほどの協力会社員がおり、このうち2/3近くは三交替で働いていました。私はオーディオテープに使用される磁気記録材の製造を担当していましたが、VHSビデオテープの需要拡大期でもあり、生産は多忙を極めていました。
NECがこの地に工場を建てた理由の一つは、宇部小野田コンビナートに隣接しており、夜勤・交替勤務する作業者を集めることができると期待したからだそうです。
NEC山口工場は操業開始から3年ほどで2千人を超える従業員を抱えることになります。給与など良い処遇で人材を募集しており、当然の流れとして、私たちの工場からもかなりの人数がNEC山口工場へと移動することになりました。
私の担当していた現場でも、頼りにしていた協力会社の若手社員が、突然退職することになりました。協力会社さんの努力で、頭数は比較的早くに補うことはできたのですが、新しい人には、経験からくる気働きなどは期待できないので、随分大変でした。
その後のNEC山口の動向については、よく承知していません。2000年代に入っても、山口工場は拡張を続けていたように思います。
その後、NECは半導体部門をNECエレクトロニクスとして分社し、三菱電機と日立製作所の半導体部門と合併したルネサスエレクトロニクスへと変わります。
2010年頃には、山口工場の生産性が時代遅れとの評価がマスコミに出始め、2018年には正式に山口工場閉鎖のプランが発表されます。山口工場は操業開始から36年目にあたる2022年6月に完全閉鎖しました。
現在、延床面積4万2500㎡(東京ドームとほぼ同じ)の工場が、空き工場です。先頃、 ルネサスは、2014年に閉鎖した甲府工場を再整備して稼働を開始しました。
山口工場にも再稼働の機会が訪れたらと願います。