農業基本法を起点にして、日本の農業の歴史を確認してみます。3回シリーズの3回目。
戦後の日本農業の歴史を振り返ってきました。最終回は、農業基本法が全部改正され「食料・農業・農村基本法」となった1999年以降の経過を追ってみます。食料の需給ギャップが拡大して耕作放棄地が増え、食料自給率が低下したなか、21世紀を迎えます。この後、日本の農業はその在り方を大きく変容させることになります。

米の減反政策(転作面積による補助金配分)が終了して、2004年以降は完全自由化されました。
BSE問題などで食の安全安心の要請が強まり、有機農業への関心が高まりました。
兼業農家が減り、意欲のある農業の担い手が増えてきたことから、経営規模が拡大して農業経営という考え方が定着してきました。
耕作面積4ha以上の認定農業者、20ha以上の集落営農組織が増えました。とりわけ集落営農組織は2000年には4000者ほどでしたが2012年には1万5000者と、10年余りで4倍近くになりました。
現在では集落営農組織の4割が法人化しており、会社形態で農業をする時代になっています。集落営農といいながら、複数の集落を集合した組織も増えていて、今では1/4の組織は複数の集落で構成されており、1割は4集落以上の広域組織です。規模を拡大することで経営を安定化させる動きが進んでいます。
また、雇用型法人経営では、いわゆる「6次産業化」に取り組む事業者が増えてきました。
農業(1次産業)者が、農産加工(2次産業)、直売所やレストランなどサービス業(3次産業)に取り組むので1+2+3で6次産業です。農業は繁閑差が避けられないので、雇用労働力の導入には農閑期の事業創造が重要です。
農地の集積は進んでいて、2020年のセンサスでは10ha以上を耕作している農地面積が過半を越えました。一方で、農業の規模拡大は必要ですが、広範囲に農地が散らばると圃場間の移動時間で大きなロスが発生します。そこで、圃場の面的集約が大事になります。
2014年に農地中間管理機構「農地バンク」制度ができて、農地の集積が仕組み化されてきました。農地バンクを通じて、これまでに20万ha余りの農地が担い手に集積されています。
農業経営は天候、病気、鳥獣や昆虫害など自然の影響を受けます。そんななかで、経営を安定させるための施策が充実してきました。交付金などもありますが、特筆すべきは2019年に導入された収入保険制度です。青色申告をすることが前提ですが、理由を問わず農業収入が減少した場合に、減収分の9割を保険で補填する制度です。
強く活力のある農業には、需要拡大が必須です。昨今のスーパーで売られる米価格高騰を「令和の米騒動」と言っていますが、この問題の本質は国内での米需要の減少です。
2010年以降、国内需要の減少を補うべく輸出が増加しています。農産物だけで、2000年に2000億円ほどだった輸出額が9000億円にまで増えています。
さらにスマート農業の浸透です。今や、ドローン操縦は農家の必須スキルになりつつあり、圃場管理用ソフトが入ったタブレット端末を手にして畔を歩いている人もたくさんいます。農業機械の自動制御は当たり前になってきており、施設園芸では生産状況を通信端末でリアルタイムに把握できます。農業の収入、利益、所得が増えてきて、儲かる仕事になりつつあります。
最後に環境問題です。実は、農業は燃料(燃焼)由来の二酸化炭素だけでなく、嫌気性発酵によるメタンガスの排出によって地球温暖化に影響を与えます。また、化学肥料や化学農薬は注意して使わないと負の環境影響を与える可能性があります。
近年、これらの環境への配慮が重要なことだと認識されるようになり、様々な対応がとられるようになり、それぞれ効果を上げています。
日本の農業の持続可能性は高まってきています。

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