とりあえず「103万円の壁」ではなくなったのですが、世間からは良いも悪いも、どちらの評価もあまり聞かれません。
そもそも、税金の控除という仕組みが分かりにくいのです。なんとなくイメージで、良いとか悪いとか言っていたので、仕組みは大きく変わりはしたのですが好悪の印象は薄そうです。
基本としては、基礎控除（48→58万円）、給与所得控除（55→65万円）とそれぞれ10万円ずつ（合計20万円）引き上げて、103万円の壁が一旦は123万円の壁になりました。
所得税は課税所得の額に応じて、税率が5%から45%まで変わる累進課税です。
仮に、控除額が20万円増える（課税所得が20万円減る）と、税率5%（課税所得200万円未満）の人は1万円税金が減ります。
しかし、税率が45%（課税所得4000万円以上）の人は9万円も税金が減ります。
昨年末の自公国の3党合意で、最終的には178万円の壁まで引き上げることになっています。
もし、178万円まで75万円引き上げたら、税率45%の人は34万円ほどの減税になります。まぁ、たくさん税金を納めているわけですからよいのかも知れませんが、減税額の大きさが反感を買いそうです。
そこで、年収103万円の壁を動かすことで、高額所得者が得をするのは感覚的におかしいとなりました。さらに、実はその裏返しで税収が大きく減ることのほうがもっと困ります。このため、20万円だけ壁を移動することにしたわけです。
しかし、これでは178万円とこぶしを振り上げていた国民民主党も、何となくこれを支持している人も納得し難いということになりました。そこで、最後になって自民党が基礎控除を年収に応じてさらに引き上げるという修正をしました。
まとめると、年収200万円以下の人は160万円から所得税がかかり、年収475万円までは控除が153万円、･･･というように段階的に引き上げるというややこしい制度です。しかも、年収200万円以上の人の基礎控除58万円からの上乗せは2年間だけの特例です。よほど詳しい人でなければ、全体を掴みづらいと思います。
結論から言えば、「103万円の壁」というキャッチ―なフレーズと、178万円という金額に振り回されました印象です。今回の措置が適切なのか否かは、よくはわかりません。
まぁ、もともと差額の75万円が濡れ手に粟で手に入るわけでもなかったわけですし・・。いろいろ勘違いで盛り上がった部分もありそうです。
日本の税金システムは複雑でなかなか理解できません。とりあえずは、ご用心です。