吉野ヶ里のアナザーストーリー。フェイクニュースの熱狂が奏功

先日の雪では、佐賀県の吉野ケ里遺跡も白く覆われて美しい光景だったそうです。

 

NHKのBSでアナザーストーリー「吉野ヶ里が燃えた 〜邪馬台国をめぐる平成の大フィーバー〜」という番組を再放送していました。ちょっと面白くて、ついつい観てしまいました。


【NHK Webサイトより】

邪馬台国の時代のクニではないか?1989年2月、朝日新聞とNHKが佐賀県吉野ヶ里遺跡の発掘成果を全国に報じると、連日見学者が押しかけ、“吉野ヶ里フィーバー”が巻き起こった。発掘後埋め戻され工業団地になるはずだった遺跡は、メディアの激しいスクープ合戦の末に保存されることに。発掘調査員や開発担当者、メディアや邪馬台国九州説を主張した作家・松本清張の思いが絡み合う古代史最大の謎をめぐる熱狂の真相。


吉野ヶ里Webサイトより2025.2.10
吉野ヶ里Webサイトより2025.2.10

要約すると、佐賀県が工業団地として造成しようとしていた吉野ヶ里では古代遺跡の発掘調査がおこなわれた。研究者のなかには、さらに発掘を続けたいと思う者もいた。

 

いよいよ、発掘調査も終わって佐賀県が埋め戻しをしようとしたとき、地方紙の論説委員だった人物が、著名な考古学者を奈良に訪ねる。

 

考古学者は一計を案じて、東京に出向いてNHKと朝日新聞にスクープを持ち掛ける。それが「卑弥呼の邪馬台国」と思われるクニが発見されたという内容だった。

これをきっかけにして、佐賀県の工業団地計画は消え、広範囲の発掘調査が続けられた。現在は国営公園として整備されて、観光名所になっている。

 

長年正確な報道を続けていた地方紙の力では、工業団地造成を止められなかったが、NHKと朝日新聞の報道によって、全国的な吉野ヶ里、邪馬台国フィーバーが巻き起こったというアナザーストーリーです。 

身もふたもないことをいえば、著名な考古学者と大マスコミによる意図的なフェイクニュースの流布なんですね。考古学者がNHKと朝日新聞の2者を選んだのが卓見です。

 

吉野ヶ里のクニは紀元前5世紀頃からはじまり紀元3世紀まで続いているとされています。一方で、魏志倭人伝で卑弥呼の使者が魏の皇帝に謁見したのは3世紀中盤(西暦238年)です。吉野ヶ里遺跡で最大の北墳丘墓は、卑弥呼の時代から200年ほど時代が遡っているのです。

☞ 2024/01/17 卑弥呼は姿を見せないおばあちゃん

 

吉野ヶ里の歴史は、広くいえば邪馬台国時代まで続いていたようですが、卑弥呼とは関係ないだろうことは、当初からわかっていたのです。ただ、それではニュースにはならないですし、遺跡を残そうという運動は盛り上がらなかったわけです。

 

結果オーライなので、良いといえば良いのですが・・。最近のマスコミの偏向報道での言い訳に悪用されないかもちょっと心配です。