溶接技能は経験で深化する。人手不足にどう対応するか?

溶接の定義は、「2個以上の母材を、接合される母材間に連続性があるように、熱、圧力またはその両方で一体にする操作」です。

 

溶接にはいろいろな方法があるのですが、最も一般的なのが「融接」です。母材か溶加材(溶接棒)のどちらかを溶かして接合させる方法です。「融接」で代表的なものが「アーク溶接」です。一般の人が溶接と聞いて思い描くのはたいてい「アーク溶接」です。

 

溶接作業
溶接作業

アーク溶接は、母材にマイナス、電極(溶接棒)にプラスの電圧をかけることで1万℃くらいの高温のアークを発生させます。母材と電極は高温で溶けて接合されます。

 

アーク溶接は電極(溶接棒)が溶けない「非溶極式」と、溶ける「溶極式」に分けられます。

 

「非溶極式」の代表がティグ溶接です。ティグのTはタングステンです。タングステン電極と、シールド用の不活性ガス(アルゴンかヘリウム)を使って、母材を溶かして接合します。

 

「溶極式」では、活性ガス(炭酸ガス)を使って、電極(ワイヤ)と母材を同時に溶かして接合するのがマグ溶接で、ティグ溶接と同じく不活性ガスを使うのがミグ溶接です。マグやミグのMはメタルです。

 

溶接はとても重要な工程です。自動車工場などでは、ロボットがバチバチ溶接していて、合理的な作業に見えます。しかし、鉄工所や造船所の溶接作業の品質は経験が支配する世界です。溶接速度や溶接電流の調整などは教科書通りにはいかないようです。

 

溶接工の人手不足と高齢化は深刻な課題です。工業系の学校でも溶接技能を習得できる施設は少なく、現場での経験を積まないといけません。現場の作業環境もいろいろで、働きやすいとはいえないこともあります。職場が若者を集める魅力に欠けるなかでは、外国人技能者に頼らざる得ないというのも実情です。

ロボットや自動化だけで済まない溶接技能の世界は、どう進んでいけばよいのでしょうか?