脱炭素やSDGsのセミナーでは、海は広くも大きくもないと説明しています。
地球は水の惑星だというのは大きな誤解です。地球の直径は約12,756㎞ですが、海の平均水深は僅かに3.8㎞です。しかも、地表面の3割は陸地です。海水の量は約14億㎦ですが、地球の体積は1兆0900億㎢です。海は、地球の表面に薄っすら存在するだけです。
そんな海ですが、人類が大気中に放出させる二酸化炭素を頑張って吸収してくれています。
気象庁の試算では、2010年代の1年間に人類が大気に放出した109億トンの炭素のうち25億トンを海洋が吸収しています。陸上の森林なども34億トンを吸収しますが、残った51億トンが大気中に残留するので、二酸化炭素濃は上がっていきます。
海洋は二酸化炭素を吸収することで、水素イオン濃度が年々下がって、今ではpH8前後の弱アルカリ性です。これを「海洋の酸性化」といいます。
海洋が酸性化すればするほど、二酸化炭素の吸収能力は低下していきます。
2000年代の1年間には、海洋が吸収できた二酸化炭素は約28億トンと推定されており、10年間で10%以上減りました。つまり、海洋のpHがずっと下がって、本当に酸性(pH7未満)にはならないのですが、これは大気中の二酸化炭素の増加速度がさらに加速することを意味します。
また、海洋の酸性化はサンゴや貝類、甲殻類など炭酸カルシウムで骨格や殻をつくる生物にとっては死活問題です。カルシウムは海洋中に豊富に存在しますが、pHが下がる(つまり水素イオン濃度が高くなる)と、炭酸カルシウムの生成が阻害されるのです。
実際に、牡蠣やホタテの養殖では被害が顕在化していますし、サンゴ礁の減少も明らかになってきました。海洋の酸性化は、プランクトンの成長にも悪い影響を与えるので、食物連鎖の上位にある魚類の生育にも影響します。
私たちの時代に、地球の母なる海を死の海にしないために、脱炭素化は待ったなしです。