硫酸鉄の海洋投棄が地球温暖化を止めたかも?

鉄板を酸洗したときに出る硫酸鉄廃棄物を海洋投棄していた時代があった。

 

酸化鉄粉末を製造する会社に勤めていました。酸化鉄粉末はベンガラと呼ばれ、顔料や機能材として、太古の昔から人類によって使われています。大昔は、天然の岩石を砕いてつくっていました。日本で工業的にベンガラ製造がはじまったのは18世紀の初め頃です。備中国吹矢村で銅を採掘する際に同時に出てくる緑燮(硫酸鉄)を原料にしていました。

 

酸洗工程(NS Fellows)
酸洗工程(NS Fellows)

現在では、原料となる硫酸鉄は、鉄と硫酸を直接反応させてつくる、チタン鉱石からチタンを分離するときに発生する副産物、鉄板を酸洗する工程から発生する副産物の3種類が主なものです。

 

明治の時代には、鉄板の酸洗で発生する廃液を直接河川に放流したり、穴を掘って土中に圧入することもありました。昭和の時代になると、さすがにこれではまずいので、酸洗廃液から硫酸を回収したうえで、発生する硫酸鉄(7水塩結晶)を船に積んで外洋に運んで投棄していました。現代では、発生する硫酸鉄は貴重な資源として酸化鉄原料として使用され、廃棄されることはありません。

 

地球温暖化が進んでいるなか、鉄濃度の低い海域が広がっているという指摘があります。

海域の鉄濃度は、陸域から流れ込む鉄の量に依存します。もっとも大きな割合は、森林の土層と乾燥帯からの飛散です。

 

森林は人による開発に加えて、温暖化によって森林火災が増えていることもあり、その面積を減らしています。また、陸地周辺の海水温があがると水の蒸発量が増えることで、陸域から飛散する鉄を含んだ粉塵が捕捉されて遠い海域まで到達しないということもあります。

 

鉄不足の海域では、海藻や植物プランクトンの成長が抑制されるので、大気中の二酸化炭素の吸収量がさらに減ってしまうという悪循環です。

 

そこで、海洋に鉄を散布してはどうかという提言がされています。

実際に海域で、硫酸鉄を散布する実験がおこなわれて、大気中の二酸化炭素の固定に効果があるという評価がされています。

なんでも、海域1㎢当り1㎏の硫酸鉄を散布すると、生物量が20倍に増えて、海水中の二酸化炭素が20%減るそうです。う~ん、どう評価したらよいのだろうか?

 

まぁ、とても経済的な手法であるとは言えそうにないので、実現はしないでしょうが、ちょっと面白いなぁと思っています。