「103万円の壁」の議論を聞いていると、日本は本当に人手不足なのか?と疑います。
103万円の壁とか、130万円の壁とか言いますが、例えば年収200万円であれば、こんな壁は感じません。本当に人手不足なら、こんな問題は起こらないような気がします。
人が職を選ぶときの第一優先は賃金の多寡ではないことも知られています。最低賃金の強烈な引き上げは、意外なことにあまり働く人に人気がありません。
日本は、世界で最もうまくワークシェアリングをしている国という評価が、本当のところは正しいのだと思います。
日本の就業者数は約6814万人です。生産年齢人口(15~65歳)が7457万人ですから、両者の比率は、91.3:100です。
米国は同じ比率で、73.1:100、欧州でドイツは84.5:100です。
日本ほど多くの人が就業している国は、世界にほとんどありません。
日本の失業率2.5%はOECD諸国で最も低く、事実上の完全雇用を実現しています。
さらに日本が素晴らしいのは、新型コロナ禍の大不況期でも実業率は2.8%を上限に上がらなかったことです。
米国の現在の失業率は3.5%ですが、コロナ禍では8.1%になっていました。失業率が現在は3.0%のドイツでも、コロナ禍では3.8%までは上がりました。
就業者一人当たりの生産性が低いという問題意識がありますが、分母になる労働者がどのような人なのかを考える必要があります。皆が皆、生産性を少しでも上げるように、継続的改善に取り組んでいるというわけでもありません。
仕事にはいろいろなものがあります。確かに、時間当たり生産性を最大にするために、ITやらDXやらを駆使する最先端の仕事もあります。
一方で、じいちゃんやばあちゃんが、孫をあやしながら野菜を袋に詰める仕事もあります。こういう仕事も世の中には必要であり、働くことは尊いことだと思います。