本来、人の欲望には限りがありません。何の規制も無いなら、貪欲な行動を続けるものです。
人の二大欲望は、食欲と性欲でしょうか。神様が人に「食欲」を与えられたのは、人には生きるための栄養を食品から摂取する必要があるからです。もし、食欲を持っていないという人がいたら、その個体は生きていけません。「性欲」の場合は、持っていない人ばかりでは、その種は持続していきません。その他のあらゆる欲望にも、人が待つべき理由があります。
人は、目の前に、美味しい料理やお酒が並んでいて、いくらでも食べてよいとなれば、お腹いっぱいになるまで食べるでしょう。
さらに、昔の中国の貴族などは、吐きながら食べたそうですから、本来は食欲に限りはありません。
しかし、実際の人は食欲を自主的に規制します。食本来の目的である栄養の摂取を超える量の食事は、肥満はもとより多くの疾病の原因になります。
また、食費の問題もあります。人の欲望には食欲以外のものもあります。無限の食欲を満たすことで、全ての資金を使い果たすと、他の欲望に費やす費用が無くなります。
ビジネスにおいて販売促進とは、消費者の欲望に対する自主規制を緩和させる活動と言えます。食品ビジネスの事業者は、食欲を刺激して、より多くの食品を、より高額な価格で消費してもらいたいのです。
食事以外のモノでもサービスでも、できれば衝動買いを促したいと考えます。
後になって、あの一品は食べなきゃよかった、あれ買うんじゃなかった、と消費者に思わせることができれば、事業者の勝利です。
ところが「人の行く裏に道あり花の山」です。
現在、より大きく儲けているのは、欲望の自主規制を強化するような商品やサービスを手掛けている事業者のようです。食欲で言えば、食欲を減退するようにいろいろな機能を取り付けた体重計、食物繊維を大量に含んで食欲を失わせるお茶、食抑制効果があるツボを刺激する針や灸、医療行為としての内服薬や注射、胃を小さくする手術などを手掛けています。
今の時代は、欲望を抑え込む商品やサービスを購入して使いたいという欲望が抑えられなくなっているようにも見えます。裏に裏は表ですから、欲望を抑えたいという欲望を抑える商品やサービスにビジネスチャンスがあるのかも知れません。