厚労省が健康被害をもたらした可能性がある紅麹サプリに「プベルル酸」という物質が含まれていたとリークしました。
現時点で不確定な情報を公表することに公益性はないと思われます。厚労省が小林製薬から知らされた情報を不用意にマスコミに漏らしたことは軽率であり、国の機関として信頼に足らず非難されるべきです。一方で、同じ時間帯に社長以下の関係幹部者が、真摯な態度で正確な情報をもとに長時間の記者会見をした小林製薬は大いに評価されるべきです。
ところで「プベルル酸」です。
JST(科学技術振興機構)の検索サービスで「Puberulic acid」を検索しても25件しかヒットしません。
25件の文献のほとんどが、北里大学によるマラリア治療に関するものです。共同研究者にはノーベル賞の大村智博士の名前もあります。
北里大学は1999年にWHOからの依頼を受けて以来、少なくとも75,000の天然物を対象にして、抗マラリア活性を研究してきたようです。
そのなかで、プベルル酸はもっとも有望な物質のひとつです。安全で安価で、効果の高いマラリア治療薬としての活用に、期待がかかっています。
WHOのレポートによると、2022年の世界のマラリア感染者数は推定2億4,900万人で、パンデミック前の2019年の2億3,300万人を1,600万人上回っています。
地球温暖化はマラリアの脅威を増します。また、日本など先進国ではマラリアが撲滅されてから年数が経過しているので、再び感染拡大したなら対応が取れない可能性もあります。
これを機会に、プベルル酸の研究は一気に進む可能性を感じます。
マラリアは、世界で年間200万人の命を奪う感染症です。犠牲になるのは、ほとんどが5歳位までの子どもです。しかし、貧困国の病気なので、儲けにならないマラリア治療薬の研究はなかなか進んでいません。
今回の事象が拡大しないことを強く望みますが、その後に”災い転じて・・”といったことにならないかと思います。同じ青カビ由来のペニシリンは、第一次大戦の悲劇のなかから発見されて、幾千万の命を救っています。