「規模の経済性」とは、生産量の増加にともなって、平均費用が低下する効果のこと。
話題の半導体や自動車などの事業では、有力な企業がライバル企業を統合して巨大化して「規模の経済性」の恩恵を受けようとします。たいていの事業では、固定費が規模の拡大ほどには増加せず、比例費だけが生産規模に応じて増加します。単純明快に「規模の経済性」が成り立つ場合が多いです。
規模の経済には「生産規模の拡大」と「企業規模の拡大」の二つがあります。
「生産規模の拡大」は、理論的に原価率を上げるので競争力を高めます。
但し、現場で働く人にとっては、生産規模の拡大は必ずしも歓迎されません。
大量生産の場合は、一人の人が携わる仕事内容が固定されます。いつも同じ作業をする方が効率的だからです。
生産規模がそれほど多くないときは、一人が何役かを掛け持ちせざる得ません。多能工化というものですが、働きがいにつながります。
つまり、「生産規模の拡大」がモチベーションの低下にならないような工夫も必要です。
「企業規模の拡大」は、範囲の経済性とも呼ばれます。
原材料や資材などの調達条件がよくなり、生産活動にかかる資源を効率的に準備でき、人材の雇用も容易になり、物流単位を大きくすることで費用も縮減されます。
自動車産業や鉄鋼産業などで、大企業どうしが連携したり合併して、巨大企業グループをつくる動きが、いくつも報道されています。
中小企業にとっても、規模の拡大が効果を表す場面をつくることはできます。
それには、自社の事業領域を再確認して、ニッチな市場を見つけることが肝心です。中小企業としての実力に見合ったごく狭い市場のなかで、規模を拡大することで競争優位を確立するわけです。
そもそも中小企業は、ニッチな市場で戦っているものであり、その市場を出ていくと競争力を失います。自社の市場をきちんと理解して、経営者を含めて全従業員で見える化することができるかどうかが、中小企業の成長のカギになります。