政治的には、右派は「保守的」で、左派は「革新的」です。経済的には、右派は「小さな政府」で、左派は「大きな政府」を志向する。というのが、一般論です。
普通は、自民党が右派で、それ以外の政党が程度と内容に差はあれども左派と呼ばれます。但し、ちょっとわかりにくいところもあります。例えば、憲法論議では、保守的で変化を求めないはずの右派の方が改正を要求しており、革新的なはずの左派が改正を阻んでいます。
岸田首相が率いる岸田派は麻生派と茂木派と共に吉田茂を源流とする保守本流です。
保守政党である自民党のなかでは、左派になります。
一方で、今回の政治資金の不記載問題で岸田首相から弾劾されて勢力を失いつつあるのが安倍派と二階派です。安倍、二階に森山派を含む三派は、反吉田茂でまとまった岸信介派の流れを汲みます。
いわゆる保守傍流で自民党のなかでは右派になります。
自民党右派は森喜朗首相以降(事実上は小泉純一郎首相以降)の日本の舵取りを主に担いました。その経済政策は、新自由主義といわれるものです。
新自由主義を辞書で引くと「国家による福祉・公共サービスの縮小(小さな政府、民営化)と、大幅な規制緩和、市場原理主義の重視を特徴とする経済思想」とあります。
小泉首相の郵政民営化で象徴されるような、民でできることは民で、という考え方です。
岸田首相は、小泉純一郎の新自由主義を批判して「新しい資本主義」を目指すことを目指しました。この新しい資本主義が何を指すのかは、今に至ってもつまびらかではありません。
しかし、岸田首相には、成長重視から分配重視=格差是正という思想が根底にあることは確かです。国家による福祉・公共サービスの拡大(大きな政府、国民負担増)による分配政策を重視することで、経済成長が図れるという考えです。
令和6年度予算は総額で113兆円という規模に膨れ上がっています。国会での財源議論はあまりされないまま、国民負担率は50%を超える予算案はそのまま成立しそうです。
分配主義の岸田政権でも、適切な分配をおこなうのは容易ではなく、結局のところは一層のバラマキ型になっているような印象です。この結果、野党が主張したいような支出は、予算案に既に盛り込まれているので、予算委員会での論戦も白熱化しません。
自民党内で予算の膨張に抵抗するはずの右派は、政治資金不記載問題を理由にして排除されました。恐らく復権は難しいでしょう。
したがって、当分はこの経済政策が続くと予想されます。これが成長につながってくれればよいのですが、少々不安があります。