中小のトラック運送業の管理会計のポイントの一つが傭車費用の分離です。
中小運送業の場合は、自社車両による運送だけで需要家の要求を賄うことはできないので、協力会社や個人事業主のトラックに運送を委託します。これを傭車(ようしゃ)と呼びますが、自車両:傭車=5:5くらいの業者が多いです。近年は、働き方改革という課題もあって、ドライバーの労務管理のしやすい自車両を増やそうとする会社が多くなっています。
運送会社の経営診断をすると、多くの会社で自車両と傭車を区別せずに収益管理をしています。このやり方は、ちょっと問題です。
ある年の年間売上高1億円の運送業を考えます。自車両で5000万円、傭車で5000万円の売上があったとします。
自車両の運送費(人件費+燃料費+経費)が70%の3500万円円、傭車先への支払運賃が90%の4500万円、販売管理費が1500万円だったので500万円の営業利益がでたとします。営業利益率5%となり、結構優良な成績ですね。
翌年も年間売上高は10億円で変わりませんでした。但し、売上高の割合が、自車両で4000万円、傭車で6000万円に変わったとします。自車両の運送費は固定分があるので75%となって3000万円、傭車先への支払運賃は90%の5400万円、販売管理費が少し増えて1600万円となったとします。この年は利益はゼロということになります。
運送業の場合、自車両便と傭車便は全く異なる事業です。販売管理費も含めて、きちんと分離して管理することが、収益の確保につながりやすいです。
また、これは他の事業者でも同じです。製造業の事業者でも駐車場や倉庫の賃貸業売上があるとか、仕出し料理を手掛けている宿泊施設とか、いろいろありますが、管理会計上は分離しておくことが大事です。