水素自動車が普及すると脱炭素になるのですか?今はなりません

以前、電気自動車が普及しても、今すぐに脱炭素に貢献するわけではないと書きました。

☞ 2023/07/17 電気自動車が普及すると脱炭素になるのですか?今はなりません

それでは水素自動車はどうなんですか?というご質問です。

 

答えは電気自動車のときと同じです。水素自動車(燃料電池車のことです)も、電気自動車と同じく走っているときには、二酸化炭素を出しません。しかし、電気自動車で電気をつくるときや蓄電池の製造・廃棄による二酸化炭素排出量を計算しなければならないように、水素をつくるときのことも考えないといけません。

 

水素自動車
水素自動車

先ず、水素自動車で使う水素をどうやってつくるのかが課題です。現在、広く使用されている水素は、メタンなど炭化水素を改質してつくるので、二酸化炭素が発生します。

 

ざっくりした計算では、水素自動車が排出する二酸化炭素量はガソリン車よりは少ないのですが、ハイブリッド車と比べるとほぼ同じになります。

 

ガソリン車より少ないのなら脱炭素に貢献するような気もしますが、何しろ水素は取り回しが難しい物質です。この世の中で最も軽い元素ですから、車載タンクには高圧で貯蔵しなければなりません。この圧力だけでも危ないですが、漏れると爆発のリスクが高いです。

 

よくガソリンより着火温度が高いとか、軽いから漏れてもすぐに希薄になるなんて能天気なことをいう人がいます。大量の酸化鉄の還元用に水素ガスを取り扱ってきて、怖さをよく知っている身からするととんでもないです。このあたりの技術開発は、もう少し慎重に進める必要があると思います。

 

それでは、水素自動車がダメなのかというと、そうではありません。

電気自動車の場合は、二酸化炭素をあまり出さない電源構成、つまり原子力発電を活用することで脱炭素に貢献するようになります。政府が目指す2030年の電源構成は原子力発電20%超ですが、これが達成できることが望まれます。

 

水素自動車の場合も、二酸化炭素をあまり出さない水素製造ができればよいのです。最も近い解決法はCCS(炭素貯留)です。自動車から排出される二酸化炭素を集めることは不可能ですが、水素製造プラントから排出される高濃度の二酸化炭素であれば、これをまとめて貯留することは可能です。

 

その先は、CCU(炭素利用)です。カーボンリサイクルというもので、化学品の原料としたり、コンクリート製品に利用することが検討されています。この技術開発は日本が得意とするところで、そのスピードは意外に速いように思います。

つまり、もう少し先の未来になれば、水素自動車は脱炭素に大いに貢献するようになります。