戦後レジームからの脱却は難しい~拘束性預金

久方ぶりに銀行の拘束性預金について耳にしました。

 

拘束性預金という日本独自の習慣は密やかに続いているようです。戦後の経済復興期の資金不足且つ激しいインフレの時代であれば、拘束性預金にも一定の意味があったのは事実です。この頃は、借手もお金が無いのですが、金融機関にもお金が無かったので、資金量を確保する手段として拘束性預金には正当性がありました。

 

拘束預金
拘束預金

しかし、戦後復興の道筋がついた昭和38年には、拘束性預金は公正取引委員会から「金融機関の優越した地位の濫用」と指摘されて悪しき慣習とされました。その後の60年以上の間、拘束性預金はなかなか解消されなかったので、金融庁や大蔵省、財務省から何度も拘束性預金を禁止する通達が出ています。

 

国会でも何度も議題になっており、旧民社党などが拘束性預金を正式に規制をしようとする動きを見せましたが、法制化までは至らず、今も通達までのようです。

 

一般には拘束性預金という習慣は過去のものだと認識されていますが、 こういった事情で実際には広く続いているようです。拘束性預金の存在が、M&Aなどの障害になっているという議論もあるようなので、これからは改善が進められていくのだろうと思います。 

 


コトバンク:拘束預金 こうそくよきん

 

「金融機関が貸出しの条件として,貸出し先の預金の払出しについて拘束あるいは制約している預金をいう。

拘束の態様によって担保預金,見返り預金,見合い預金,にらみ預金に区分される。

さらに広義には歩積預金・両建預金を含める。

 

正式に質権設定契約のある担保預金は拘束されるのは当然であるが,見返り預金,見合い預金,にらみ預金には法的効力は及ばないにしても一応担保的機能をもつ。

 

「見返り預金」とは金融機関が預金証書または通帳を保管しているか,担保差入書を徴求しているが,その手続を留保している預金。

「見合い預金」とは書面などの正式契約によらず口頭で拘束の約束をし,解約,引出しを差止めているもの。

「にらみ預金」とは口頭の約束もしないが,事実上解約,引出しをさせないようにしているもの。

 

このように,金融機関が取引の相手方との関係で有する優越的な地位を不当に利用して行われる場合が多く,このような場合は,独占禁止法上取引上の優越的地位の不当利用にあたるとされ,禁止される (2条9項4号,19条) 。

 

また,このような行為は預金金利と貸出し金利の差額によって,実質金利を高めることになり,このような形の高い金利を強要することが,臨時金利調整法に違反するとして,問題とされる可能性もある。 


最後の実質金利についてちょっと解説します。

例えば、貸出金1000万円(年利率3%)の50%を1年満期定期預金(年利率1%)に振り替えて拘束している場合です。

実質金利は[(1000×0.03)-(1000×0.5×0.01)]/[1000-(1000×0.5)]となるので年利率5%となります。表面金利(3%)との差が2%※です。

 

※拘束率50%のときの実質金利は、貸出金利(この場合は3%)と預入金利(1%)の差と同じになります。