仕事以外で読んでいる本の9割がたは歴史ものの小説(文庫本)です。
史実として正しいのかどうかはよくわかりませんが、江戸幕府の統治機構は、それなりに優秀だったように思います。特に興味深いのは、役職を与え、その役職に応じた役料を渡して、その範囲でそれぞれの責任で仕事させるというシステムです。昨今の政治家の政策活動費問題とは異なり、役料の使い方は、その者に一任されています。
江戸幕府の統治機構で最も高位の役職は、3つありました。
「御側衆」 将軍の最側近です。今で言えば、官房長官と与党幹事長を兼ねたようなもので、文官のトップです。
「大番頭」 大番は近衛兵団のような部隊のことです。江戸幕府は軍事政権でもありましたから最強軍のトップです。今で言えば自衛隊統合幕僚長といったイメージで、武官のトップです。
「御留守居役」 文字通り、将軍不在のときに代理をします。大奥を取り仕切るのが重要な役割で、通行手形の管理なども担当します。今では大奥に該当するものが無いので、例えるのが難しいですが、副総理兼内閣官房副長官みたいな感じです。
この3役(幕府の公的行事や接遇を担当する「高家職」を含むと4役)の役高が、全役職の中で最も高くて5000石です。1石を現在のお金に換算すると約5万円くらいの価値ですが、生活水準の差がありますから、現在の実感では約30万円と考えるとよさそうです。つまり、5000石は15億円になります。
役職に対する報酬が15億円とは高すぎるように感じますが、この役高のなかでその役職に応じただけの屋敷を構え、家来や家人を雇い、装備を調え、格式を維持する必要がありました。イラストのように、お城に出勤するときには何人もの供揃えが必要だったりします。
時代劇の有名人では、大岡越前や遠山の金さんなど町奉行の役高は3000石(9億円)、鬼平こと火付け盗賊改めの長谷川平蔵は役高が1500石(4.5億円)です。町奉行は警察と裁判所を兼ねた役職で文官、火付け盗賊改めは対テロ組織部隊を率いる武官です。
1人の町奉行には、公式には与力と同心合わせて155人が配属されていました。しかし、世界一の大都会・江戸の治安をこの人数では守れませんから、私与力(奉行が直接雇う)、岡っ引き(銭形平次なんかです)や下っ引きなどが必要です。また、捕り方やら牢番などの実働部隊もいなければなりません。
与力の役高は平均200俵(70石=2000万円くらい)、同心(必殺仕事人の中村主水なんかです)の役高は40俵2人扶持(20石=600万円くらい)です。形式的には、与力や同心が岡っ引きやら下っ引きを雇うのですが、とても足りません。付け届けや賄賂で、その費用を補っていたという部分もありますが、奉行もその費用を負担していました。
まぁ、何か言いたいわけではないのですが、政治家の政策活動費問題からの連想でした。