日経新聞に、地球温暖化への影響が牛肉業界に逆風となるという趣旨の記事がありました。
よく知られているように、牛のゲップに含まれるメタンによる温室効果は、その影響が大きいのです。温室効果ガスといえば二酸化炭素ですが、メタンは二酸化炭素の影響を1とした場合の指数である温暖化係数(GWP)が25です。二酸化炭素の25倍の温室効果があるというわけです。
ここで注意が必要なのは、一般にGWPは今後100年間の影響の程度(GWP-100)を示します。メタンのGWP-100が25です。
ガスは大気中で長期には分解されるので、影響を与える期間によって指数が異なります。
メタンは二酸化炭素より寿命が短くて、今後20年間の影響(GWP-20)は85、二酸化炭素の85倍の温室効果があります。
地球温暖化の原因となる温室効果ガスとしてGWP-100基準でメタンは全体の約20%を占めます。GWP-20基準では、もっと比率が高くなります。
メタンの放出の6割が人間の活動に由来しています。さらに、その4割強は家畜のゲップからの放出です。グラフにあるように、家畜のうち3/4が牛由来というわけです。
GWP-20基準では、二酸化炭素85億トン分です。
ちなみに、グラフでバッファローとあるのは主にインドなどの南アジア圏でたくさん飼育されている水牛のことです。牛の飼育頭数が約15億頭に対して、水牛は1.8億頭だそうです。以下の順位はヤギ、ヒツジ、ブタと続きます。
温暖化対策のためには牛のゲップから排出されるメタンに注目するのは当然です。世界の人が牛肉を食べるのや牛乳を飲むのを控えるのも温暖化対策とはいえます。しかし、いかにも味気ない世の中になるので、代わりの案が提案されています。
最も注目しているのは海藻の効果です。牛の飼料にある種の海藻を少量混ぜ込むとメタンの発生量が減るのだそうです。他にも、カシューナッツの殻から抽出した油を混ぜるとか、コーヒー滓も効果があるとかいわれます。
このほか、品種改良によってメタンを発生させない牛をつくることもおこなわれています。また、特殊なマスクを牛に取り付けて、ゲップで出てきたメタンを吸収させることもおこなわれます。もし、吸収したメタンを燃料に再利用できると、再生可能エネルギーですかね。面白いかなって思います。
いろいろな技術開発が進んでいくことが、日本の畜産業に追い風になるような気がします。