就業規則や給与規定は、厳密には中小企業診断士の守備範囲ではありません。しかし、経営上は重要なことなので、経営診断の際には違反が無いか程度にはチェックします。
労務管理に関する事項で明らかな違反があるような場合、経営の持続性に疑義が生じますから早期に是正をしてもらう必要があります。もちろん、社労士さんときちんとした顧問契約を結んでいるような会社では問題はないのですが、中小企業の場合は全てがそうなっているとは限りません。
就業規則に記載する事項には、労働基準法により、必ず記載しなければならない事項「絶対的必要記載事項」と、ルールを定める場合には記載しなければならない事項「相対的必要記載事項」とがあります。
絶対的必要記載事項には、労働時間に関する事項、賃金に関する事項、退職に関する事項がありますが、記載が欠けている場合がときどきあります。相対的必要記載事項は、結構な割合で記載が欠けています。
例えば、ある会社の就業規則に給与の支払いに際して控除するものとして、法令で認められている「社会保険料の控除や税金の源泉控除」に加えて「歓送迎会や社員旅行など行事の個人負担分」が定めてありました。
こういう規則は、「賃金の全額払いの原則」に反しますから、「労使協定」によって例外とすることが決まっていないといけません。
さて、今年の4月から労働条件明示のルールが改正されます。追加されるのは、「就業場所・業務の変更の範囲」「有期労働契約の更新上限の有無と内容」「有期労働契約の無期転換申込機会と無期転換後の労働条件」の3つです。「就業場所・業務の変更の範囲」は全従業員に対する絶対的必要記載事項です。
☞ 厚労省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
労働条件通知書は、正社員だけでなく契約社員や準社員、アルバイト、パートなど、全ての従業員に対して発行しなければなりません。同一労働同一賃金で代表されるような、従業員に対する均等待遇の実現を目指しています。
尚、これらの明示のルールに違反すると30万円以下の罰金が課せられます。