不正が起こるには、3つのアイテム「動機」「機会」「正当性」が必要です。
ものが燃えるのに「可燃物」「酸素」「熱(火源)」の3つが必要なのと同じです。どれか一つのアイテムでも欠けていると、ものは燃えませんし、不正も起こりません。逆に言えば、3つが揃わないようにすれば、火事になりませんし、会社を危うくすることもありません。
不正をするには「動機」があります。
借金返済に追われているといった明白な動機ばかりではありません。どんなにまじめな人でも、何かしらの事情はあるものです。
コロナ関連詐欺では、若手キャリア官僚が摘発されるようなことがありましたが、お金が動機ではなかったようです。
動機は、その強弱や差し迫り方に違いがあっても誰しも少しはあります。しかし不正を犯す「機会」は滅多にありません。不正行為を起こす能力や実行できる立場が必要です。一般に、不正防止の根幹は、この「機会」の排除になります。
機会の排除で最も多く取られる手法は「多重チェック」でしょう。担当者や担当部門がおこなった行為を、担当者の場合は上司が、担当部門の場合は他の管理部門が検査、検証するというわけです。
最後に「正当化」です。「社長が賄賂をもらっているのを知っているから、俺が少しくらい懐に入れても・・」とか「あんなに露出して大勢のなかに入ってくるんだから、ちょっと胸を触っても・・」などという身勝手な正当化もあります。
「この会計処理は以前から慣習として続けられていて弊害はなかった」とか、「過剰なルールであって守らなくても品質や安全に影響がないことがわかっている」といった良心の呵責をほとんど伴わない正当化もあります。
絶対に不正を起こさせないためには、「機会」を排除するしかありません。
自動車検査不正で言えば、自主検査という仕組みがそもそも拙いのです。もしそれが重要な意味を持つ検査であれば、国が第三者機関を設置して検査をおこなうのが当然です。
政治資金の会計不正では、会計検査する組織も仕組みも無いのがいけないのです。アメリカでは年間100億円以上のコストを掛けて政治資金の監査をしているそうです。
また、こういう仕組みでコストがかかることは、意味もない検査や過剰なルールも淘汰されることが期待できます。日本は一度決めた規制やルールが仮に時代の変化や技術の進歩で合わなくなっても、そのまま継続される傾向が非常に強いように思います。規制やルールそのものを見直すことが必要ですし、見直すように要求することも大事です。