企業の成長には、情報の共有、見える化を進めることが有効といわれます。
日本企業は、基本的に終身雇用だったし、社員の会社への帰属意識がとても高かったので、情報の共有を進めることに抵抗やリスクは小さかったようです。ところが、現在は転職が一般的になってきており、共有してしまった営業秘密が流出するリスクが気になります。
会社に勤めていたときに気をつけていたのは、階層によって共有する情報の質と範囲を区別することです。
部長と共有する情報、課長、係長、主任、一般と共有する情報はできるだけ明確に区分します。役職の仕事の量や責任の違いほどに処遇(給与とか役得)に差がなかったので、情報によって役職としての統制力を発揮させることは、いずれの階層であっても必要です。
ところが、社内グループウェアが完備された現在では、情報の階層別管理は意外に難しくて、意図しない情報の共有が進んできています。情報共有だけであればよいのですが、当然ながら重要情報の流出や他社での利用といったリスクにも強い配慮が必要になってきました。
情報共有による生産性の向上効果と、重要情報の流出などによるリスクの折り合いをどうつけるのかは難問です。教科書的には、従業員への教育と監視を強化したうえで、情報を積極的に開示して共有するのが正解なんでしょう。でも、そんな都合の良いことができるとは思えません。
某大手回転寿司チェーンのCEOによる情報漏洩事件があったように、トップマネジメントですから競業避止をもろともせず、同業者と情報を共有する時代です。厳格な管理はとても困難なようです。ある程度のリスクは腹をくくって、情報の共有や見える化を進めるしかありません。コンプライアンス(遵法)もまた、より重要です。