さがなものもいなければ国は亡びる。藤原隆家

NHKの番組で、藤原隆家を取り上げていました。来年の大河ドラマ「光る君へ」の宣伝を兼ねているのかも知れません。 

 

「光る君へ」は、平安時代の物語です。主演は吉高由里子さんで紫式部を演じます。相手役は江本佑さんで藤原道長です。道長の兄が藤原道隆。藤原道隆の長女定子が一条天皇の皇后となり、宮中で定子に仕えたのが清少納言です。道隆の長男が伊周(異母兄が2人いる)、二男が隆家です。藤原隆家は、大河ドラマで永山絢斗さんが演じる予定でしたが大麻事件で降板し、代わって竜星涼さんに決まりました。

 

2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」
2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」

藤原隆家は、「天下のさがなもの(荒くれ者)と呼ばれていました。

隆家は、関白藤原道隆の子であり、皇后定子の弟です。平安貴族のど真ん中にいるのですが、とても個性的です。信念を貫くと言えば格好いいですが、かなりの武闘派で乱暴者です。

 

兄の伊周は才色兼備でスマートです。公家の世界で人気を集めていきました。どうも、道隆の家系は美形の人が多かったようです。

一方で、弟の隆家は大鏡で「いみじう魂おはす」と世間の方に人気がありました。

 

伊周と隆家に一条帝の寵愛を受けて皇后になった妹定子を含めた3兄妹の配置は、父の道隆がどこまで意図していたのかわかりませんが素晴らしかったです。

 

残念だったのは関白道隆が42歳で亡くなったとき、伊周がまだ21歳(定子は18歳、隆家は15歳)だったことです。道隆は後任の関白に伊周を推挙しますが、結局叶いません。道隆の弟、29歳の藤原道長が関白を引き継ぎ氏長者となります。その後、道長はその政治力をいかんなく発揮して、伊周、隆家は苦しい立場になります。

 

藤原隆家はその後大宰府長官に赴任します。中央では道長に押さえつけられていたのですが、九州で持ち前の奔放さを取り戻していきます。そこに「刀伊の入寇」という大事件が起こります。隆家40歳のときです。

 

中国大陸東北部では、契丹(モンゴル族の国)が勢力を伸ばし、刀伊(女真・満州族の国)は朝鮮半島に向けて押されてゆきました。困窮した刀伊は、船団を組んで半島沿岸部を襲撃するようになります。

刀伊と半島の一部勢力が共同して、対馬、壱岐を次々と襲い陥落させます。その勢いのままに刀伊の水軍が九州本土に襲い掛かります。これに対して、隆家は公家とは思えない無類の統率力を発揮して、追い払うことに成功しました。

 

大鏡には、「筑紫には、かねて用意もなく、大弐殿、弓矢の本末も知りたまはねば、いかがと思しけれど、大和心かしこくおはする人にて、筑後・肥前・肥後、九国の人をおこしたまふをばさることにて、府の内につかうまつる人をさへおしこりて、戦はせたまひければ、かやつが方の者ども、いと多く死にけるは。さはいへど、家高くおはします故に、いみじかりしこと、平げたまへる殿ぞかし。公家、大臣。大納言にもなさせたまひぬべかりしかど、御まじらひ絶えにたれば、ただにはおはするにこそあめれ」とあります。

何の準備もしていない突然の海外からの侵略に対して、ひるまず撃退した隆家に対して、大納言になって当然だということです。