円安が進行して、ついに1ドル150円台です。移転価格税制のリスク対策は十分でしょうか?
移転価格税制は、企業が海外子会社との取引価格を調整して、海外に所得を移転することを防ぐためのものです。簡単に言えば、「グループ会社間の取引価格は、独立した第三者間の取引価格と同じにすること」というものです。しかし、為替の急激な変動があると、このコントロールは難しくなり、移転価格税制のリスクがでてきます。
為替変動が無い場合の移転価格税制。
例として、日本の親企業が原価100円で製造した製品を140円で海外子会社に卸します。海外子会社がこれを150円で販売します。
会社全体の利益は50円で、日本の親会社は40円、海外子会社は10円の利益です。この利益に、それぞれの国で税金がかかります。
これを日本の親会社が110円で海外子会社に卸すように変えれば、会社の利益50円は変わりませんが、日本での利益10円、海外での利益40円に調整できます。
日本より海外の税率が低い場合には、こういう調整をやりたくなります。
日本の税率が50%で海外の税率が20%とすると、最初のケースでは日本で20円、海外で2円の22円を納税して純利益は28円です。調整したケースの納税額は日本で5円、海外で8円の13円となり、純利益は9円増えて37円になるというわけです。
しかし、日本の親会社が開発し、製造ラインを構築し、広告宣伝も担っているなら、親会社:海外子会社の利益配分が1:4になるのはおかしいです。そこで、日本の税務当局は移転価格税制に則した利益、つまり10円ではなく40円に対して課税することができます。そうすると、納税額は日本で20円、海外で13円の合計33円となり、純利益は17円です。こうなると、とんでもないので、移転価格税制のリスク管理は海外に関連会社を持つ企業では非常に重要です。
ややこしいのが為替変動です。先の例では、全てが日本円でしたがドル/円の関係もあります。
1ドル100円で一定で、日本の親会社が100円の原価の製品を1.4ドルで海外子会社に卸して、海外子会社は1.5ドルで販売した場合です。この場合は、会社の利益50円、親会社40円、子会社10円で問題なしです。
円安で1ドル150円になったとします。日本の親会社が同じく1.4ドルで卸すと210円の収入になり110円の利益です。海外子会社は0.1ドル(15円)の利益なので、会社の利益は125円ですが、親会社と子会社の利益配分が変わります。こうした場合には、卸価格を調整して配分を適切に戻すことができます。
この変動が突然起こった場合、例えば取引日と決済日で為替レートが異なるような場合は、利益配分の変動を調整できません。ややこしい問題で、事前によく検討して、ルールを決めておく必要があります。
詳しいところは専門家の記事を貼り付けておきます。