国によって異なる商習慣があり、海外とのビジネスでは注意が必要です。
現代の日本人には解かりにくいのが、サービスを受けたときに手渡すチップです。チップは規定料金とは別に渡すものですが、日本語では心づけ、寸志、祝儀などと言います。江戸時代を描いた時代劇などでは、吉原遊郭や高級料亭などは当然ながら、茶店や蕎麦屋でも、お客は必ず心づけを渡しています。駕籠屋(雲助かな?)に渡す心づけの額の多い少ないからはじまるドタバタ作品は結構多いです。
日本でも、中世に銭貨が流通するようになってから、江戸時代を経て明治時代 になっても心づけ=チップの習慣はありました。
チップを渡すのは、アメリカやヨーロッパの多くの国ではまだまだ一般的です。アジアの国でも、チップに近い金銭の提供はそれほどには珍しくはありません。
つまり、心づけ=チップの習慣がほぼ無くなっているのは、中世以降の古今東西で、戦後の日本だけなのかもしれません。
チップとは、結局のところ、賄賂というか袖の下の一種です。公務員に渡せば賄賂で違法だけど、民間だったらチップで合法と説明されていたりしますが、公私の区別は難しいです。
また、民間の方が公務員に金品を渡す動機は、よいサービスを受けたいのではなく、不当な意地悪をされないように、というのが多いでしょう。つまり、具体的な事象の発現するより以前に渡すことになるので、対価性が不明確になります。
チップや心づけは、本来はお気持ちですから決まった金額がありません。しかし、チップが多いか少ないかで提供されるサービスの質や量が異なることはよくあります。
一般的に、日本人を含むアジア人はチップをはずまない傾向があります。このため、欧米の施設で白人の客に対して、受けるサービスの質が劣ることがあります。これを人種差別だと騒ぐのは間違いです。
また、女性もチップをケチる(節約する)傾向があります。女性へのサービスが男性よりもおざなりになっていても、男女差別というわけではありません。
旅行ガイドには、よくチップの相場について(例えば10%とか)書いてあります。しかし、気をつけないといけないは、チップの相場は国や時刻や店などによって大きく違うことです。
知らない国、知らない店でスマートにチップを渡すことは不可能です。やはり、よく知った人に頼るしかありません。もちろん、頼った人には、心づけを奮発しないといけません。