暑い日が続きますが、セミは元気に鳴いています。ちょっとうるさい。
アブラゼミは孵化すると幼虫の姿になって、5年だか7年だかを地中で暮らします。木の根元から樹液を吸っているそうです。何年も暗い地中で育った後に、ようやく地表に出てきます。暗い夜に、よたよたと木に登って、羽化して成虫になります。成虫になってからは、2~3週間の寿命ですが、その間に木の皮の間に卵を産み付けます。
セミの一生は、ちょっとけなげです。暗い土の中での長い苦節のときを経て、ようやく明るい地上に出て盛大に歌い上げるものの、僅かな期間で寿命は尽きてしまいます。
それなのに、イソップ童話の「アリとセミ」(「アリとキリギリス」のキリギリスがセミに代わっている)では、セミは夏の間に蓄えもしないで騒ぎ立てていて、冬に困窮する愚か者に譬えられています。
「セミのはねをつかむ」というのは、セミはただでさえ騒々しいのに、はねをつかんだりすると更に大きな音で鳴くという意味です。
「蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)」は、カエルが鳴きセミが騒ぐ。 やかましく騒ぎ立てるばかりで、くだらない議論のたとえです。
どうも、セミには気の毒なことばかり言われているようです。その例外が、我らが芭蕉師匠でしょうか。「閑さや岩にしみ入蝉の声」
古刹において、盛大に鳴いているセミの声を聞きながら、私の心はしずかになる。大岩はセミの声を受けれて、消し去ることはしない。という境地にはなかなかなれないものです。