暑い夏を快適に過ごすには冷房が欠かせませんが、現在のような電気式空調機の歴史はまだまだ短いです。
古代エジプトの王は、川の水を入れた素焼きの壺を、奴隷に大きな団扇で扇がせて、冷風をつくっていました。古代ローマの皇帝は、アルプスから万年氷を運ばせて、これを奴隷に団扇で扇がせたそうです。ペルシャの王様は、冬に採取した天然氷を氷室で保管しておき、屋根裏に置いて、やはり奴隷に扇がせました。冷気が下に降りることを利用しました。
長い間、冷房は天然氷を使うもので、超が何個もつくような贅沢でした。
しかし、1850年にアメリカの医師によって機械式製氷の技術が発明されます。
日本で最初の機械式製氷は、高熱で苦しんでいた福沢諭吉を見舞いたいという慶応義塾の塾生の願いで、東大の先生が実験室で作ったのが最初だそうです。
その後、機械式製氷は改良が重ねられ、大量の氷をつくることができるようになります。
1880年にはマディソンスクエアガーデンに氷式冷房が導入されるようになります。使われる氷柱が天然氷から機械製氷の氷となり、奴隷の団扇が扇風機(ファン)に代わりましたが、仕組みは古代ローマの劇場と大差ありません。
1900年代になると、氷冷房は、氷柱を使うものから氷から冷水をつくってエアワッシャーで噴霧して冷気をつくる方式に代わっていきます。創建当時の国会議事堂の冷房は、氷を使ったエアワッシャー式でした。
冷凍機による冷房は、1887年に英国のリンデ社がインドの王宮に納入したのが世界第一号だそうです。その後、主にアメリカで普及していきます。日本では、1917年に日立製作所の創業者、久原房之助が神戸の自宅に設置したのが最初です。尚、現在のようなヒートポンプ式空調が登場するのは、日本では1932年の朝日新聞社社主の村山龍平の自宅でした。