GDP統計データの信頼性はどの程度必要なのか?

中国政府が発表するGDPなど統計データは信頼できるのかというご質問です。

 

答えは、信頼できないです。しかし、他の国の統計データが信頼できるかというと、それも違うと思います。どんな国でも、その政府が発表するデータが完全に信頼できるということはありません。そもそも信頼できるデータを収集することができないので、正しく分析することも当然にできません。

 

総務省統計局
総務省統計局

例えば、どこの国においても最も重要なGDP統計であっても、その信頼性を証明することは困難です。GDP統計はどこの国も発表はしていますが、その求め方は国によってバラバラですし、国際的なチェックも受けません。

 

数年前に厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で不適切な取扱いがあったことがニュースになりました。

この調査は、大規模事業所では全数調査が原則なんですが、東京都だけは数が多いので抽出調査をしていたそうです。この抽出調査の結果を、全数調査へ換算する復元処理をしていなかったのが問題で、なんと15年間も続いていたそうです。結果、給与の高い東京都の事業所のデータが十分に反映されず、金額を低めに誤認していたということです。

なお、15年前に遡って、何故に復元処理をしていなかったのかは不明です。抽出調査に変更を支持した担当者がシステム変更の指示を忘れた? システム担当者が変更するのを忘れた? といったことが言われています。

 

国土交通省では「建設工事受注動態統計」で不適切な処理が表面化しました。

この調査は、全国の建設業者から約1.2万社を抽出して、その月の受注実績を報告させるものです。業者の方も面倒なので提出が遅れがちになり、数か月分の調査票をまとめて出すことがありました。これでは困るので、役所の担当者が調査票の数か月分の受注合計額を最新の月に合算して書き換えていたそうです。年間1万件ほどというので、全体の1割弱で日常的に行われていたようです。

これなんか、まぁ合計が一緒ならいいように思うのですが、なんとある月にある業者が提出しなかった場合は、その月に提出した業者の平均を計上するルールがあったそうです。要するに受注額の二重計上ですが、書き換えをしていた都道府県の担当職員はそんなルールを知らなかったのです。この書き換えは、この調査を開始したときから20年以上行われていました。

 

厚労省の事案はGDPを低く、国交省の事案はGDPを高くズラします。全体のGDPの値に対してどの程度の影響があるかというと、軽微なんだろうとは思います。しかし、日本のデータも完全なものではありません。

 

これでわかるのは、日本のGDP統計というのは、非常の多くの分散した調査結果(日本には57の基幹統計がある)を統合して精緻に計算されているということです。しかし、精緻であれば正確であるとは言えないところが悩ましいです。

GDP統計を公開する目的は何かと、改めて考えてみれば、信頼性を追求することがよいのかさえ疑問です。会社経営でも月度実績はいい加減で構わないので、翌月初めの2日目か3日目には見ておきたいと思いますよね。