被選挙権は権利なのか資格なのか

今日は統一地方選挙の後半戦で、宇部市では市議会議員選挙の投票日です。

 

安倍元首相殺害事件の犯人が主張した統一教会とは異なり、岸田首相殺害未遂事件の犯人が主張した被選挙権について議論するのは憚られています。殺人やテロ事件をきっかけに勉強するというのもいかがなものかと思いますが、被選挙権について考えたことがなかったので、ちょっとまとめてみます。

 

宇部市議会議員選挙(2023年)
宇部市議会議員選挙(2023年)

総務省のwebサイト「なるほど選挙」から引用します。 

選挙権は、18歳以上の国民・市民(3か月以上居住)にあります。但し、禁固以上の罪で刑に服している間は権利を失うなど一部の制限があります。

 

問題の被選挙権です。参議院議員と都道府県知事は満30歳以上、その他の議員と市区町村長は満25歳以上という制限があります。また、選挙供託制度で国会議員選挙であれば300万円、市議会議員選挙であれば30万円の供託金を預けておくという決まりがあります。選挙での支持が極端に少ない場合には、この供託金は没収されます。

 

選挙権と被選挙権の違いですが、憲法(昭和21年)や公職選挙法(昭和25年)では、選挙権は「権利」であり、被選挙権は「資格」であると整理されていたそうです。それが、時代が下るにしたがって、被選挙権の権利性が高まってきています。現在では、被選挙権は「権利ではあるが資格を伴う」となっています。

 

そして、その資格を決めるのは立法府で、これは憲法に定められています。

【憲法44条】 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

「資格は法律で定める」とあり、但し書きがついていますが年齢で資格を定めることはこれに反していません。つまり、憲法制定の段階で年齢を資格要件とすることは想定されていたようです。

 

供託金を求めるのは財産による差別ではないかという異議も出そうですが、国会議員で300万円、市議会議員なら30万円という金額は「当選を争う意思のない人が売名などの理由で無責任に立候補することを防ぐ」という意味で多額ではないという判断です。憲法が定めている立法府の裁量のなかというわけです。

【憲法47条】 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

ただ、供託制度は、暴露系とか迷惑系ユーチューバーの方が売名行為(あるいは逮捕逃れ?や恐喝目的?かな)で立候補することを防ぐ役には立ちませんでした。

方向性としては、被選挙権年齢は引き下げられるように思います。

 

ちなみに、G7各国の選挙権・被選挙権年齢です。

カナダの上院(元老院)議員は選挙でなく国王(イギリス国王)が総督の推薦に従って任命します。

イギリスの貴族院議員は貴族が終身で就任し、フランスの元老院議員は間接選挙制、ドイツの連邦参議院議員は各州政府の代表者で構成されます。

 

二院制の国で、上院議員が直接選挙で選ばれる国は意外に少なく(全体の3割ほど)、日本・アメリカ・イタリアのほかは欧州ではスイス・スペイン・チェコ・ルーマニア・ポーランドくらいです。大きな国では、オーストラリアとブラジル・メキシコ・アルゼンチンなど中南米の国が直接選挙制です。