ドイツが原子力発電所の稼働を停止したことがニュースになっています。代替する電力として風力発電を活用していることも紹介されています。
日本の再生可能エネルギーによる発電は、ダムを使った水力発電(2021年度実績で全発電量の7.5%)と太陽光発電(同じく8.3%)が主力です。風力は年間94億kWhで0.9%という構成比です。ドイツは総発電量の24%を風力発電で賄っているので、大きな差があります。
ドイツのように日本でも風力発電を増やせばいいという人も多いのですが、あまり簡単ではありません。
中学校の社会科で習ったように、日本は温帯湿潤気候(温帯モンスーン気候)という範囲にあります。この気候の特徴は、風が弱くて且つ風向きが不安定なことです。特に夏季の風速はとても弱いので、陸上風力発電の適地がほとんどありません。
一方で、ドイツやイギリス・オランダなどはユーラシア大陸の西岸に位置して、西岸海洋性気候です。偏西風の影響を受けて、年間を通して安定した強い風が吹きます。
つまり日本では、ドイツのように平野の農地に風力発電のタワーを立てても風が吹かないので発電効率が著しく下がります。日本の陸上で風力発電の適地となる年平均風速6m/s以上の場所(図で黄色やオレンジ色)のは、北海道・青森・秋田の日本海側の海岸か高い山の稜線ということになります。
そこで、期待されるのが洋上風力発電です。洋上のほうが風速のベースが高いので確かにポテンシャルは高まります。
しかし、北海の洋上風力発電所の設備稼働率は年間50~60%で安定していますが、温帯湿潤気候の日本ではそうはいきません。日本で最もポテンシャルの高い北海道・東北の日本海では、冬季には欧州並みの稼働率60%に達する可能性がありますが、夏季は10%くらいに下がります。風が吹かないのでどうしようもありません。
つまり、日本で風力発電を導入するには、風任せで発電量の落ちる夏季の電力需要に応えるための代替電力源が必要なのです。
そうは言っても、水力も太陽光も導入には限界がありますから、再生可能エネルギー比率を上げるには、洋上風力発電を一定規模で導入することは必要なようです。しかし、それも一筋縄でもいきません。
山口県では2009年から下関沖に洋上風力発電所を建設する計画が進められていましたが、結局のところ地元の反対でとん挫しました。建設反対の理由は低周波による健康被害があるという科学的には釈然としないものですが、洋上といっても、日本ではなかなか社会的合意を得ることは難しいのです。