春眠暁を覚えずは朝寝坊の詩じゃない

大谷翔平選手が1日に12時間の睡眠をしっかりとるということが話題になっています。

 

大谷選手のような活躍は到底できない若者のなかには、朝寝坊でしくじる人もおります。昔から「春眠暁を覚えず」というように、春の眠りは心地よいので、ついつい寝過ごすものだと理屈をつけることもあります。しかし、どうもこの詩の作者は朝寝坊をしてはいないようです。

 

瀬戸内海の夜明け
瀬戸内海の夜明け

「春眠暁を覚えず」は、孟浩然(もうこうねん)という方がつくった「春暁という五言絶句の冒頭部分です。

 

春眠不覚暁(しゅんみんあかつきをおぼえず)

処処聞啼鳥(しょしょていちょうをきく)

夜来風雨声(やらいふううのこえ)

花落知多少(はなおつることしるたしょう)

 

春になって日の出の時間がはやくなったので、心地よい眠りから目覚めると、既に夜が明けていたという意味です。

続けて、あちこちで鳥が鳴いている。昨夜は風雨の音が聞こえていた。花はどれくらい散ってしまったのだろう。まぁ、何とも風流な詩です。

 

孟浩然は689年に生まれているので、今から1300年ほど前の方です。この方は、官吏にはなったものの、反権力的な方で官僚機構には馴染めませんでした。優れた詩才を高く評価されていたこともあり、結局は市井に戻り多くの詩をつくりながら悠々と過ごしたとされます。この詩をつくった頃は今の中国浙江省の湖州市辺りに住んでいたようです。

 

さて、春暁を井伏鱒二は次のように訳しています。

 

ハルノネザメノウツツデ聞ケバ

トリノナクネデ目ガサメマシタ

ヨルノアラシニ雨マジリ

散ッタ木ノ花イカホドバカリ

 

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