開発や改良した新しい規格製品を販売する場合には、価格決定の順番が大事です。
販売チャネルは少なくとも2つあります。1つは販売店に卸すルートで、1つは直接販売するルートです。もちろん、その他の販売チャネルもあるケースも多いです。さて、卸と直販の2つの販売チャネルしかない場合に、最も有利に新製品の価格を決める順番を考えます。
多くの事業者さんは直接販売することを優先しがちです。お客さんの顔が見えることで売る喜びも大きいですし、何より中間マージンが無いので利益率が高いのが魅力です。
しかし、直接販売で全てを売り切ることは普通はできないので、既存の販売チャネルが必要になります。製品には生産する際に必要な最小の規模がありますし、規模が大きくなれば原価も下がりますから、自前で売り切れるだけの生産をするのも難しいです。
そこで価格を決める順番です。
直販を考えている事業者さんは、直販価格を先に設定したがる傾向があります。例えば、製造原価100円で直販経費が50円の製品の直販価格を250円にしたとします。この場合の粗利益は100円です。
販売店がこの直販価格を知っていた場合に、価格交渉の結果170円で販売店に卸すことになったとします。この場合の粗利益は70円です。ここで、販売量を増やして利益を確保したい販売店には、直販のプレミアム分を補うために、安い価格を設定しようという動機付けが働きます。プレミアムが30円と想定されるなら、販売店は自店の利益を削って、販売価格を220円にすることになります。
そうなると、直販の売れ行きが下がるので販売価格を30円値下げすることになり、粗利益は70円。卸と比べてリスクの大きい直販が同じ粗利益ではビジネスとしては失敗です。
つまり、販売店との価格交渉を先におこなって決める方がよいのです。直販価格が決まっていない段階での卸価格は170円以上で決まる可能性が高いです。例えば、180円だったとします。販売店は180円の仕入れ価格に対して販売価格を250円と決めたとします。
事業者としては、この販売価格を知った後で、自らの直販価格を決めるわけです。直販によるプレミアムをを加えて直販価格は280円となります。
仮に、この製品が直販経由で100個、販売店経由で400個売れたとしたら、直販価格を先に決めたときの粗利益は70円×100+70円×400=3万5千円です。直販価格を最後に決めるなら、粗利益は130円×100+80円×400=4万5千円になります。販売店の粗利益も50円×400=2万円から70円×400=2万8千円に増えます。