製鉄はインドと中国が何故だか遙かに先んじた

今から5000年以上昔の古代エジプトの墓から、鉄製の装身具がいくつか見つかっています。

 

当時は製鉄の技術はなかったので、鉄隕石(隕鉄)を加熱してハンマーで加工したものだそうです。同じく古代メソポタミアでも鉄が使われていたようで、楔形文字を発明していたシュメール人は鉄を「天の金属」と呼んでいたということです。ちなみに、古代エジプトは象形文字(ヒエログリフ)です。

 

FNの高校物理(製鉄の歴史)より
FNの高校物理(製鉄の歴史)より

地球は鉄の惑星なので、鉄はどこにでもあります。赤鉄鉱・褐鉄鉱・磁鉄鉱などの酸化鉄鉱石のかたちもありますし、砂鉄という砂粒のかたちもあります。

 

鉄を本格的に使うには、酸化鉄鉱石を還元して鉄にする必要があります。

この鉄の還元方法を最初に発見したのは古代南インドで、今から3500年くらい前のことです。ウーツ鋼あるいはウルック鋼といいます。

磁鉄鉱と木や竹などを密閉した窯で燃やすと、木から発生する炭酸ガス中の炭素を磁鉄鉱が吸収して融点が下がります。溶けた磁鉄鉱は、炭酸ガスで還元されて鋳鋼(炭素を多く含む鉄)が出来上がるというわけです。

 

初期のウーツ鋼はアラビアに輸出され、鍛造によって炭素を除いて強くし、(シリアのダマスカス刀が有名ですが)刀剣など兵器に加工されました。この兵器は、争いが続いていた欧州全土に供給されました。

 

アラビアを経由する輸出によって、ウーツ鋼の需要が伸びたことから、製鉄の技術は南インドからスリランカにかけて発展していきます。その後、12世紀頃まで、西洋世界ではインドの鉄鋼が最高と評価され続けます。

 

ウーツ鋼は紀元前5世紀頃にはスリランカで盛んにつくられていたのですが、この地には多くの中国人が住んでいました。彼らが技術を持ち帰り、中国でも独自に製鉄技術が発展しました。紀元前2世紀の漢時代には、早くも原料や燃料などの装入物を上から入れ、炉の底部から銑鉄を排出するシャフト炉(縦型炉)が発明されています。