M&A 買収価格は過大か過少かのどちらか

この会社を買う場合の適正価格は?と訊ねられても、本当のところはわかりません。

 

事業承継や相続等の場合は、税金をいくら払うかを決めるために、会社の評価額を求めます。これは、公式な価格(承継するときの時価)の決め方があるので、機械的に計算できてもめることはありません。しかし、会社を買収するとか売却するとかは、売り手と買い手の相対取引ですから絶対的な価格の決め方はありません。

 

工場(本文と関係ありません)
工場(本文と関係ありません)

買い手の買いたいという気持ちが強ければ高い価格になります。売り手に売りたい気持ちが強いと低い価格になります。

買い手に競争相手があればより高い価格になります。売り手に競争相手がある(買い手に他の選択肢がある)なら、安い価格になります。

 

買収価格=「事業価値」+「資産価値」-「負債」 が基本です。

 

「資産価値」と「負債」は調査すればおおよそはわかります。あくまでも“おおよそ“です。会計計算書類にある資産のなかには実際の価値より過剰あるいは過少の評価のものがあります。例えば、土地の時価などがそうです。

負債のほうは、粉飾とか意図的なものがなければ大きな過剰や過少がないのが一般的ですが、退職金の一部か全部が簿外債務になっているようなケースもあります。

 

問題は「事業価値」です。

一般には、譲り受けようとする会社が将来にわたり生み出すだろう利益を事業価値とします。算定には、その会社が将来生み出すキャッシュフローを計算するDCF(Discounted Cash Flow)法が最もよく使われます。簡単に言えば、買収価格として支払ったキャッシュを事業価値で補填するということです。このほか、買収価格を決める簡易的な方法としては、「資産-負債」に予測営業利益の2~5年分を加算してするようなやり方もあります。

 

まぁ、いずれにしても未来のことは誰にもわからないので、買収価格の決定には、後から客観的に評価したら成功することもあれば失敗することもあります。

 

そこで、プロに頼もうとM&Aアドバイザーなどに買収価格を査定してもらうこともあるでしょう。しかしアドバイザー会社は手数料と成功報酬の短期間での獲得が目的ですから、微妙に利害が一致しません。結局のところ、買収価格に正解はありません。

買い手も売り手も、ポストM&Aの事業について、しっかり心を砕くしかないです。