中小企業が銀行融資を受けるとき、多くの場合は「経営者保証」を求められます。
【日経web】政府は23日、新興企業の経営者が「連帯保証人」にならなくても、銀行などから融資を受けられる、新しい制度を2023年3月に始めると発表した。経営者個人がリスクを背負うこれまでの融資慣行を改め、新興企業の育成や前例にとらわれない事業展開を後押しし、日本の競争力を高めたい考えだ。☞ 財務省「経営者保証改革プログラムを策定しました」
簡単に言えば、経営者保証の存在が経営者の積極的な投資や事業承継や事業再構築などを阻害してるので、なるべくなくしたいということです。金融機関が経営者保証を求めるハードルが高くなります。
経営者にとって連帯保証をしないで借入ができるのなら歓迎、となるとは限らないので注意が必要です。むしろ、金融機関に対して信用を補完できず、円滑な資金調達ができなくなる企業が増える可能性もあります。
金融機関と言ってもメガバンクや政府系金融機関はあまり関係がありません。問題は地方銀行や信金・信組です。かなりの混乱が予想されます。金融機関としては、大きなリスクを負って貸付をすることはできません。規律ある経営をおこなっている信用できる企業かどうかを判断しなければなりません。
その基準が経営者保証に関するガイドラインの3要件です。
(1)資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
(2)財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
(3)金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている
中小企業でこの3要件を満足していると胸を張っていえる会社はかなり少ないでしょう。最初の要件である「法人と経営者個人の分離」でも、完全に達成できている会社のほうが少ないと思います。「財務基盤」も「情報開示」も、経営者自身が把握していないケースも多く、なかなか難しいでしょう。
3要件は満たせそういない。仕方ないから経営者保証を受け入れて融資を受けようとしても、金融機関から断られる可能性があります。今回の改正で、金融機関には、経営者保証が必要なことを国(金融庁)に報告する手間が生じます。金融機関としては煩雑な手続きをするくらいなら、融資をしないという判断もあり得るでしょう。
資金調達を円滑に進めるためには、会社の社会性を高め、ガイドラインの3要件をクリアできるように会社の仕組みと財務を磨くことがたいせつです。