愛って公認されると純粋でなくなる~憂国忌

1970年11月25日に三島由紀夫が自衛隊市ヶ谷総監部で割腹自殺をしたので、今日は憂国忌です。

 

三島由紀夫の事件は薄っすらした記憶しかありません。もしかしたら、リアルタイムの記憶ではないかも知れません。三島由紀夫という小説家はノーベル賞候補になったように、世界で認められた優れた才能です。しかし、同性愛をテーマにした一連の作品や、衝撃的な最期から、あまり共感はできません。その唯一の例外となる作品が「潮騒」です。

 

映画「潮騒」1975年
映画「潮騒」1975年

「潮騒」は三島由紀夫が昭和29年に書いた小説です。それまでの三島作品とは全く異なる健康的な物語です。何故、三島がこんな通俗的な作品を創ったのかは、かなりわかりにくいです。

 

潮騒は繰り返し映画化されています。

最初の映画化は小説が発売されたその年の1954年で、ヒロインは青山京子です。次が1964年で吉永小百合、1971年は小野里みどり、1975年は山口百恵、1985年は堀ちえみです。我々世代は山口百恵・三浦友和コンビの潮騒です。

 

お話では、純粋で男らしい男性と、強くて女らしくない女性の、美しい愛情が、困難を乗り越えて成就します。時代の感情を強く受けた物語だと思います。

 

三島由紀夫が、それまでずっと書いていた同性愛というテーマを捨てて、健康的な異性愛という新たなジャンルの潮騒を書いたのでしょうか。三島は後に、男色物を書き続けるうちにこれが公認されるようになった。愛って公認されると純粋でなくなるんだ。と言っています。

 

カタールワールドカップで、同性愛やLGBTsの問題が取り上げられ、欧州と中東の新たな争いになっています。三島由紀夫なら、この時代をどんなふうに描くのでしょうか?