省エネセミナーで「日本では地熱発電が普及しないのは何故か?」と質問がありました。
経産局の方から、国立公園内の景観保全や温泉事業者さんとの調整などで、普及にはハードルがあるという説明でした。日本で地熱エネルギーを開発する際の、基本的な状況を整理しておきましょう。
地熱発電の好立地は、2つの面があります。1つは自然豊かなところであることです。日本の熱水系資源の82%が国立公園などの開発規制区域にあります。もう1つが火山や温泉の近くで火山噴火や地震の可能性が高いことです。原子力発電所の好立地と真逆です。
地熱発電所の建設が日本の豊かな自然環境や景観を壊してしまうのは、観光産業はもとより国民にとっても困るわけです。また、地熱発電はクリーンな印象ですが、火山性ガスや地熱水は有害・有毒です。火山噴火や地震があっても大丈夫なように安全対策をきちんとしなければなりません。蒸気の復水にしても、砒素などを含んでいますから、農作物を含めて長期の安全性や風評被害の予防を確保する必要があります。
日本の地熱資源量は、アメリカ・インドネシアに次いで世界3位ですが、発電量は世界10位です。世界最大の地熱発電大国はアメリカです。アメリカの地熱発電所の集積地はカリフォルニア州からネバダ州にかけての断層沿いです。地震のリスクはありますが火山の影響はあまりありません。また、広大な砂漠地帯で近くに人が住んでおらず農地もないのが有利です。
アメリカと日本の間の8か国は、フィリピン、インドネシア、トルコ、ケニア、メキシコ、イタリア、アイスランド、ニュージーランドです。日本ほどには環境影響評価や周辺住民などとの調整にあまり苦労が大きくないのかも知れません。
日本としては、環境や景観を損なわず、安全性が高い地熱発電所建設の技術を高めていくことが必要です。2050年のカーボンニュートラルに向けて、楽しみでもあります。