琴は桐でつくられていて意外に軽い

宇部市には琴をつくっている会社がありますが、琴って見た目よりずいぶん軽いのです。

 

琴の材料は桐です。桐でつくった桐箪笥は、高価な着物などを収納して長持ちさせますから嫁入り道具の定番です。桐が箪笥(たんす)として優れているのは、防腐・防虫の性能が優れていること、火に強くて火事でも燃えにくいこと、さらに水にも強くて湿気が侵入しにくいことだそうです。それもこれも、桐の特異な構造にあります。

 

桐の顕微鏡写真
桐の顕微鏡写真

桐は実用的に使うことができる木材の中では、世界一軽いものだそうです。桐の顕微鏡写真を見ると、たくさんの気泡があります。発泡スチロールと同じような構造になっています。

このたくさんの気泡があるお陰で、先に書いたような優れた機能があるというわけです。

☞ 2015/07/09 琴となり下駄となるのも桐の運

 

琴は通常6尺(約1.8m)あり、13弦で幅もあるので、見た目からは結構重そうに見えます。しかし、実際は5~7㎏ほどしかなくて、意外なほどに軽いのです。ちょっと重めのサーフボードくらいですから、大柄な人なら小脇に抱えて持ち運ぶことも簡単にできそうです。

 

源氏物語では、光源氏が都を追われてから須磨に退き、明石に移り、再び今日に戻るとき。つねに傍らには琴があります。ずいぶんな愛琴とはいえ、運ぶのは大変な感じがしますよ。

しかし、これは琴が軽いから運びやすいのではなく、光源氏の時代の琴は七弦の小さな楽器である琴(きん)だったのです。古来の中国では貴人や文人が、たしなみとして琴を奏でていたようです。現在、私たちが琴と呼んでいる13弦の楽器は、筝(そう)といいました。

 

戦後になって当用漢字の数を減らす際に、筝を外すことになって、筝の代替字を同じ「こと」と読む琴としたそうです。

ちょっと、ややこしいです。