人材育成の問題を尋ねると、「指導する人材が不足している」が6割で最も多かったそうです。<2022年版ものづくり白書>
会社がきちんとしたものづくりをしているのであれば、ものづくり人材は不足していないはずです。よいものづくりはできても、それをうまく教えること、つまり説明することができる人が少ないということです。
人材育成の方法は、OFF-JTとOJTに分けられます。
基本的な事項はOFF-JTで教えておかなければ、現場に入れることはできません。これは当然のこと、特に安全衛生に関わることや、ものづくり現場に特有のルールはしっかり指導します。
もし、この段階で「指導する人材が不足している」のであれば、人材を補充することは必須です。補充できないなら、職場に人を投入したり、新しい仕事につけたりはできません。
また、同じ職場でもものづくりの内容は時間と共に変わりますから、1年もそれ以上もOFF-JTがおこなわれないということはありません。
問題はOJTです。実際のものづくりの能力は現場経験による学習で培われます。このOJTに際して指導する人材(優れた指導者の意味だと思います)が不足しているということです。
OJTの手順は「見せる」「説明する」「やらせてみる」「出来栄えを確認する」の4つです。
「見せる」の後に、なぜそうしなければならないかを説明することができれば、確かによいのですが、実は教える側も曖昧なことはよくあります。説明は、教わる側と教える側の両方に対してOFF-JTで補うことを宣言します。これだけで、「指導する人材の不足」の多くが解消されると思います。
OJTで最も重要なことは「見せる」ことです。ものづくりがきちんとできる人が、自分がおこなっていることを「見せる」のです。また、指導を受ける側はしっかり「見る」のです。説明はほんのちょっとだけ置いておいて、「やらせてみる」「やってみる」ことに進むのがよいと思います。そして、正確な説明ができる人材をつくることは、ものづくりの高度化には欠かせませんから、取り組んでいきましょう。