国民と関係者の納得がカギ:ルーデンドルフの総力戦

経営戦略。「戦略」と戦いという言葉が入っています。

 

戦いですから「敵」がいます。敵とは「組織の自由意思の行為を阻害する存在」と定義されます。経営における敵は「会社の自由意思の行為を阻害する存在」のことで、会社の外にも中にもあります。経営戦略では、この敵が誰であり、どのような力量なのかをはっきりさせたうえで、排除したり弱体化させることを計画します。

 

ルーデンドルフ 総力戦
ルーデンドルフ 総力戦

19世紀までの国と国との戦争は、お互いの政府と軍による戦いでした。歩兵や騎馬兵が刀剣で戦い、弓矢や単発の銃で戦う時代の戦争は、軍事作戦という意味がありました。

この戦争の形態が大きく変わったのが日露戦争であり、その後の第一次大戦、第二次大戦です。20世紀になってからは、戦争は軍と軍だけの戦いではなく、国家と国家の総力戦になったのです。

 

ルーデンドルフはナチスドイツの陸軍軍人(大将)です。「総力戦」という戦争論の大著を残しています。戦艦や航空機、機関銃や砲弾を使うようになった20世紀の戦争は、軍事作戦にはおさまらず、お互いの国の国民を巻き込んだ総力戦になっていきます。

国の自由意思は「国民の生存」であり、それを阻害する存在は「敵の国民」となり、戦争の目的は「敵国民の殲滅」となったわけです。

 

このため、戦争は長期化し持久戦となります。特にどちらかの国が攻撃より防御に専念する場合(今回のウクライナや専守防衛を掲げる日本など)には、攻撃側が戦力で圧倒できない限り、理論的には戦争は永遠に続きます。

そこで、敵国民を一瞬で殲滅できる核兵器が登場して、実際に第二次大戦で(目的は違うが)使われたわけです。しかし、核兵器を多くの国や組織が保有あるいは事実上保有した現代では、自由に使用することはできません。

 

こうした戦争を勝ち切るには、国民並びに関連する国や組織が、その戦争の正当性に納得している必要があります。会社でいえば従業員や顧客や供給元など理解関係者が、自社の経営理念に共感しており、これに真剣に取り組んでくれることが大事です。

 

ルーデンドルフは、回顧録で「 第一次世界大戦はドイツの 戦争目的に世界各国を 納得せしめる公正な 目的を欠いていたためにドイツの 負けとなったのである」と言っています。

ルーデンドルフ将軍は1937年に亡くなり、ヒトラーも参列した国葬が営まれました。