京セラの稲盛和夫名誉会長が亡くなられました。90歳でした。
稲盛さんに直接お会いしたことがあるわけではないのですが、経済界の巨星です。私のようなものの人生にも、間接的な影響はありました。勤め先は京セラさんとの取引がありましたし、盛和塾に入っておられた経営者さんも知っています。それ以上に、ある経営上の決断に際して稲盛さんの考え(考え方?)が事を左右したことがありました。
稲盛和夫という人物については、改めての紹介は不要でしょう。
日本には、古今多くの名経営者がおりますが、時代を超えた普遍性を持っているという点で、松下幸之助とともに突出した存在と思います。
稲盛和夫は、働くことは修行であり、心を高める手段だと語ります。臨済宗の僧籍も持っていた稲盛の考えの骨格には仏教の教えがあります。
PHP(Peace and Happiness through Prosperity)思想を自ら創造し提唱した松下幸之助とは少し違います。
仏教に帰依する者として、稲盛和夫の基本は「利他」です。働くことは修行であるとともに、「はたをらくにする」ことです。その際に、経営者も労働者も分け隔てが無いということを徹底したのが、稲盛の凄いところです。皆、等しく働いている=修行しているということであり、先頭に立って最も働くのがリーダーというわけです。
口で言うのは誰でもできるのですが、自ら実行した(実行し続けた)わけですから、驚きです。日本航空の再建を託されたのは78歳のときです。当時、京セラ東京事務所にいた人に聞いたのですが、日本航空で執務した後に京セラの自室に来て、夜9時とか10時まで熱心に仕事を続けていたそうです。
京セラにも労働組合があります。組合員数2万人を超える規模です。京セラ労働組合のwebサイトをリンクしておきます。トップページに次のように書いてあります。
<京セラ労働組合の概要>
京セラ労働組合は、旧京都セラミック株式会社創業から10年がたった1969年9月にその従業員が集まり、誕生しました。
設立当時から「労使間の枠を超越した企業の人間集団の幸せをとことん追求する世界に類のない労働組合をつくろう」という考えをもち、現在も「労使同軸」「責任二分論」という言葉でその精神が引き継がれています。
稲盛和夫にとって、労使という概念は無く、会社は大家族という認識です。「労使対立」などはありえず、「労使協調」ではなく「労使同軸」なんです。労使のベクトルは一致するべきもので、一致しないのならば共に働くことはできないのです。ここから、アメーバー経営という労働者と経営者との境目がなくなるような経営手法も生まれました。
稲盛和夫という稀代の名経営者であれば、地球規模での社会のひずみが顕在化している世界に対して、どんなベクトルを示して「世界同軸」となる処方箋を書くのか聞いてみたかったですね。
偶然ですが、昨年後半に稲盛さん関連ブログを書いていました。