バリウムとストロンチウムは花火にも磁石にも使われる

各地で再開にこぎつけられた花火大会もあれば、準備はしたものの結局中止になったところもありました。宇部市はその間で、短時間(20分ほど)開催でした。

 

花火の鮮やかな色が出るのは、中学校の理科で習う炎色反応というものです。緑色はパリウム塩、赤色はストロンチウム塩、黄色はナトリウム塩、青色は銅塩を混ぜた炎色剤を使います。炎色剤を入れた球を星といいますが、内側にストロンチウム塩、外側にナトリウム塩を層状にしておくと、外側から先に燃えるので黄色の花火が後から赤色に変わります。

 

花火の構造
花火の構造

日本で最初の花火は、1585年(天正13年)に下野国で皆川山城守と佐竹衆が戦ったときに、互いに敵陣に向けて花火をあげたことだと言われます(諸説あります)。

1613年にイギリスからの使者が、徳川家康に花火を見せたという資料もあるそうです。

 

当時の花火は、打ち上げ花火ではなく筒に火薬を詰めて、火の粉を噴き上げるようなものだったそうです。打ち上げ花火が登場するのは19世紀になってからで、今のような色付きの綺麗な花火は明治以降のことです。

 

花火の炎色剤として大活躍のバリウム塩とストロンチウム塩ですが、永久磁石(ハード・フェライト磁石)の材料として使われています。というか、私にとってはこちらが専門で、花火に使われていることをよく知りませんでした。

 

フェライト磁石とは酸化鉄にバリウム塩やストロンチウム塩などを加えて焼成してつくるもので、永久磁石のなかで最もたくさん使われています。

世界初のフェライト磁石は、1930年に東京工業大学の加藤、武井両博士が開発したもので、東工大のある大岡山の永久(Permanent)磁石から、OP磁石と命名されました。このときはコバルト塩を使ったコバルトフェライトです。

 

その後、コバルトは稀少な金属で値段が高いこともあって、1952年にバリウムフェライトが登場し、1961年にはストロンチウムフェライトが登場します。

バリウムとストロンチウムは同じアルカリ土類金属で性質が似通っています。周期律表では、ストロンチウムはバリウムの1つ上(その上はカルシウム)です。

  

バリウムには僅かですが人体毒性がある(劇物に指定されています、79番)こともあって、保磁力が高くて安全なストロンチウムを使うストロンチウムフェライトがフェライト磁石の主流になっています。もちろん、バリウムやストロンチウムが入っていても、磁石の場合は、ただ黒いだけです。