利用者の少ない地方のローカル鉄道について、廃止を含めた検討をする機運です。
路線の廃止の目安は輸送密度(区間別平均通過人員)が2000人を超えているかどうかです。山口県で廃止検討の対象になる輸送密度2000人以下の路線は、岩徳線・小野田線・美祢線・山口線の宮野(山口市)以北・山陰線の小串(下関市)以北の5路線となります。むしろ、輸送密度2000人以上のほうが短いというわけです。
経済合理性を考えれば、100円儲けるのに400円から1000円以上もかかる路線をいつまでも維持するのはナンセンスです。JRとしては、さっさと廃止するのが当然と言えます。
沿線自治体からの要請や、地元の反対運動などを受けて、廃止の決定を先延ばしていても、何もいいことはなさそうです。自治体の支援も形ばかりですし、沿線住民も廃止には反対してみても、列車に乗ってくれるわけでもありません。
鉄道は移動手段の一つです。ある地点(通常は居住地)から、ある地点(目的がある場所)への移動の用に供するわけです。現代の地方では、自家用車・バス・タクシー・福祉サービスなど移動手段が複数あって、個人が選択できて、鉄道のシェアが下がっています。そのうえ、移動する明確な目的そのものが減っています。コロナ禍も影響して、元気なうちは、毎日病院に通うのを楽しみにしていた高齢者が、家でゴロゴロするようになりました。
それでも、鉄道の地方路線は何とか残したいという希望はあります。
鉄道路線を残す一つの方法は、鉄道を移動手段から、目的そのものに変えることです。山口線では、毎週末にSLやまぐち号が運行されています。新山口駅から島根県の津和野の間を往復するのですが、山口や津和野の観光地が目的ではなく、やまぐち号に乗ることが目的です。
SLやまぐち号まで大掛かりではない、トロッコ列車でもいいので、鉄道路線そのものを目的とすることが考えられます。
美祢線・小野田線・岩徳線・山陰線・・どの路線も、少しでも旅客を増やそうと沿線の観光地を紹介するサイトをつくっています。☞ 乗ろうよ!美祢線
観光地を紹介するだけでは、なかなか乗客が増えません。路線そのもの、列車に乗ることを目的にするほうが効果がありそうです。また、列車に工夫する方がコストパフォーマンスも高そうです。☞ 2022/03/21 美祢線に乗ったら、鉄道ファンがいっぱい
もう一つの方法は駅(駅舎)に注目することだと思います。観光地を目的地にするのではなく、駅を目的地にするのです。鉄道と他の交通手段の大きな違いは駅(駅舎)の存在です。自分の住んでいる場所を表すのに、駅ほどありがたいものはありません。鉄道の駅が無くなると、地域の目印が地図に載らなくなり、一気に寂れていきます。
ローカル線の駅は、どこも風情があります。維持が大変だからといって壊してしまって、プレハブの物置みたいな建物にしているところもありますが、幸い山口県の駅舎は、古いまま残っているのが多いです。この駅舎の古さを活かしたまま整備するのです。
駅は地域の経済や文化の中心だった時期があるのです。その歴史を踏まえた整備をすれば、目的地とすることは可能です。ここにしかない、何かを演出する工夫をしてみてはどうでしょうか?インスタ映えするようなものを、考えられそうです。
三つ目は貨物輸送だと思うのですが、これはまた今度・・・。