統一教会の信者は日本に30~60万人おり、関連団体の会員を含めると更に増えます。
日本の新宗教の信者数は、合計すると3000~4000万人と思われます。一方で、日本の雇用者数は約6800万人で、中小・小規模事業者が雇用する人は3000万人を超えます。したがって、事業主はいろいろな新宗教の信者を雇用する機会があります。しかし、従業員を宗教を理由にして不利益な扱いをしてはいけません。
従業員がある宗教の信者であることがわかったから解雇する、ということはできません。
また、ある宗教の信者である従業員が、勤務時間外に他の従業員をその宗教に入信するように勧誘したり、その宗教の活動を見学に連れて行っても、解雇や懲戒の理由にはなりません。
誘われた従業員が、自分の意思で高額な仏像やら掛け軸やら怪しげな壺を購入したとしても、解雇や懲戒はできません。
裁判の判例では、仏教寺院の僧侶が、新宗教の信者になったことのみを理由に解雇されたのは不当、というものもあります。
但し、職場内とか就業時間内に宗教活動や勧誘など仕事の妨げになるようなことをすれば別です。就業規則に「就業時間内あるいは会社施設内での政治活動や宗教活動をしてはならない」と、しっかり書き込んでおけば、指導したり懲戒や場合によっては解雇も可能です。
尚、就業時間とは勤務についてから勤務を離れるまでの時間なので、休憩時間を含みます。
こうしたトラブルを避ける唯一の方法は、採用時に判断をすることです。ある宗教の信者だから採用しないという判断は、雇用する側の自由なので合法です。しかし、採用時に信仰について問うことができないので、どうやって知るのか?というハードルがあります。
採用時には以下のようなことをしてはいけません。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
結論としては、いろいろな宗教や信仰がありますから、仕事に大きな支障が無いのであれば、一旦は目くじら立てずに容認することだと思います。一緒に働く他の従業員が嫌がるような場合には、よく話をすることも大事ですが、一対一では話さないなど、落ち着いて対応するほうがよいでしょう。しかし、存外そういう人の方が、よく働いてくれるかも知れません。