PM2.5と地球温暖化、不都合な真実

ちょっと前まで、毎朝のテレビでPM2.5予報がありましたが、いつも間にかなくなりました。

 

PM2.5は、大気中に浮遊している直径2.5μm以下の非常に小さな粒子のことです。PMとは「Particulate Matter(粒子状物質)」の頭文字で、工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、硫黄酸化物(SOx)などで、大気汚染の原因となります。

 

北京の大気汚染(2015年)
北京の大気汚染(2015年)

日本列島で観測されるPM2.5濃度は、2015年をピークにして減少しています。

これは、日本に飛来するPM2.5の主な排出源である中国で、排煙処理がおこなわれるようになったことが要因です。これまで、未処理で出していた排煙の全部か一部を処理することで、大気汚染が緩和されました。

 

十数年前ですが、中国で工場見学をしたときに、地方政府の担当者からこの工場は排煙処理もしっかりやっていると、装置を紹介されました。少し興味があったので、装置の内部を見せてもらったら、中身がなかったことがあります。当時は、そんな意識の人たちもいました。

 

今の中国は発展のステージを駆け上っています。国民の意識も高まってきており、大気汚染を容認することもなくなっています。中国政府機関の発表では、2022年上半期に、中国全国の地級市クラス以上の都市のPM2.5濃度は32μg/m3で、前年同期比で5.9%減少していました。日本の環境基準は、1年平均値15μg/m3以下かつ1日平均値35μg/m3以下なので、6か月平均32μg/m3は、この基準を満たしているとはいえませんが、結構いい線まで改善されてました。

 

PM2.5が減少して大気汚染が緩和されることは、人の健康や安全にとって重要です。ところが、このPM2.5の減少は、地球温暖化には負の影響を与えるという一面があります。

 

中国の大気汚染では、町が白く霞んでいる映像をよく見ますが、主な成分は硫酸塩です。この白いPM2.5は、太陽光を散乱反射しますから、地球の放射強制力にマイナスの貢献をします。

つまり、中国で環境規制が厳しくなり、大気汚染が解消されると地球温暖化が加速します。

 

逆に、アフリカやロシア・中東の国の大気汚染は、石炭や薪など固体燃料の不完全燃焼による黒い汚染です。この黒いPM2.5は、太陽光を吸収して、放射強制力にはプラスとなり地球温暖化を加速させます。

日本の石炭火力発電技術を普及させれば、黒いPM2.5を減らすことは可能ですが、なかなか出番がきません。黒いPM2.5の排出は抑制されておらず、ウクライナ戦争による燃料基地の破壊や建物施設への砲撃などで新たに大量放出もされています。つまり、地球温暖化はさらに加速する方向です。

 

こんななか、私たちにできることは省エネ(節電・節ガス)への取り組みです。是非、先ずはエネルギーの見える化をおこなって、省エネ意識を啓発していきましょう。