カーボンニュートラル(炭素中立)と脱炭素は似ているのですがちょっと違います。
そもそも地球にある炭素の量は一定ですから、地球規模ではカーボンはもともとニュートラルです。地球にある炭素が、どこにどんな形で存在するのかが問題なんです。大気中なのか、地殻になのか、海洋になのか、動植物(特に森林)の生体のなかなのか?
化石燃料(石炭・石油・天然ガスなど)とは、数億年以上の長いときを掛けて、動植物やプランクトンなどが地中に堆積し、圧力や熱によって変成されてできた炭素化合物です。
人類が、この長く地中にあった炭素を掘り出して、エネルギーとするために燃やしたことで、炭素の居場所が地殻から大気中に変わったわけです。
炭素が大気中にあることで、地球温暖化という問題が発生したわけです。一方で、脱炭素という言葉をそのまま受け取ると、炭素が存在しない世界をめざそているように感じます。
しかし、地球規模での炭素は増えも減りもしないので、文字通りの脱炭素は成立しません。
ここでいう脱炭素とは、大気中の放出される炭素を無くすという意味です。先ずは、化石燃料の燃焼に伴って、地中から大気中に移動する炭素をゼロにできないかと考えます。例えば、太陽光発電や風力発電、さらに原子力発電のような炭素を排出しない非化石エネルギーの獲得が考えられます。
しかし、全てのエネルギーを化石燃料を一切使わないで、持続的につくりだすことは困難です。原子力発電は安全性とともに核廃棄物の問題が解決できません。再生可能エネルギーも国産のバイオマスを除けば、太陽光も風力も地熱も水力も、どれも環境負荷や労働安全面での負荷が大きくて、持続可能ではありません。
そこで、化石燃料の使用によって大気に移動する炭素を、回収し貯留(CCS)したり、再利用(CCUS)することが必要になります。この技術革新は、日本でも急速に進んでいますし、これからも一層加速していくと思われます。また、炭素の回収は、森林や里山の保全でも実効が上がりますから、森林大国日本の出番です。
2050年に日本がカーボンニュートラルを達成することは、ほぼ100%可能です。しかし、世界で達成できる国は、欧州の人口小国を除けば、イギリスと日本だけとなりそうです。
米中二大国が脱炭素化の具体的な計画をつくることは、現時点では期待薄です。ロシアや中東などの化石燃料輸出国も同じです。
つまり、日本がいくら頑張っても、地球規模では効果が無く、そのうえ温暖化による異常気象の被害を最も受ける北半球の中緯度地域に日本はあるのです。困ったことですが、きっとみんながついてくると信じて、先頭を走るしかありません。