日本に住宅ローン危機がくるのは怖い

日本で住宅ローン危機が起きないかという心配をするのは愚かですか?

 

独立した頃、と言っても2014年の夏ですから8年前のことです。住宅ローンについて、アドバイスを求められて、全期間固定金利の「フラット35(当時の金利は1.7%台)」にするといいと思うと答えました。

国土交通省の調査では、2014年度は住宅ローンの7.1%が全期間固定金利、25.7%が固定金利期間選択型(通常は10年固定が多い)で、変動金利型は50.2%が約半数でした。このときでも、全固定型を選択する人は少なかったです。

 

国交省のデータは2019年度が最新です。2019年度では全期間固定型は4.6%(5年間で▲2.5%減)、固定選択型は19.9%に減って、変動型が63.1%(5年間で12.9%増)となりました。

 

国交省のデータは、これ以降が未発表なので、不動産流通経営協会のデータをみてみます。こちらのデータでは、2019年度の変動型が66.4%と国交省より3.3%高めにみています。このデータの2021年度の実績では変動型が82.1%と、大きく増加しています。

異次元の金融緩和によって、金利が大幅に下がっています。住宅ローンの変動型も、住宅ローン減税を加味すると、実質金利がマイナスです。

結果的に金利の安い変動型を選ぶ人が増えているわけです。 変動型ですと金利が0.5%を下回るようなこともあるので、1.3%台の固定金利を選ばないのは当然に見えます。

 

ちょっと試算です。

3000万円の住宅ローンを35年返済で組むとします。固定金利1.5%の総返済額は3858万円になります。利息分が858万円です。もし、変動金利0.5%が35年間続くなら、3271万円の返済で利息分は271万円です。しかし、過去の変動金利型住宅ローンの出来上がり金利の平均は約4%です。乱暴な計算ですが、3000万円を4%の金利で借り入れると、返済額は5579万円(ほぼ倍になる)です。

 

全固定金利(フラット35)」は、変動金利と比べて587万円のコスト増になります。しかし、たった587万円です。35年で割れば、1年間に16万7千円にしかなりません。金利が変動するリスクを回避できるなら、安いコストだと思いました。

 

日本の住宅ローンの貸出総額は2014年4月は182兆円でしたが、2021年4月は206兆円を超えています。驚くことに、24兆円も増えています。どうやら、住宅ローンによる借入は、今後も増加していきそうです。また、貸し手側の金融機関も、安全な(回収できなくなる可能性が低い)住宅ローンを積極的に営業しています。

 

さらに、新規借入の80%以上が変動金利になっているのも、金融機関にとって変動金利がより有利だからです。最初は赤字でも(金利0.5%ではさすがに金融機関も赤字になる)、変動金利の住宅ローンで契約を取ろうとします。

変動金利とは、当に”変動”なので、金融機関が(制限はありますが)勝手に変えることができます。とても都合がよいのです。

 

アメリカの住宅ローン金利は、2021年の3%台から、足下6%台に上がっています。日本の物価高は円安が原因だから是正をしなければならないと、金利を上げることになると、変動金利型住宅ローンの金利が上がります。

 

日本は住宅供給が過剰で、アメリカのように不動産の市場流動性が高くないので、住宅ローン金利の変動に対する耐性がありません。 仮に1%の上昇でも、住宅ローン危機がやってくる恐れがあります。要注意です。