食料の輸出は飢餓の輸出(食料の輸入は飢餓の輸入)とよくいわれます。
この「食料」は高級食材ではなく、食用穀物などの「熱量となる食料」のことです。”ロシアとウクライナが食料を「人質」に、いまや世界は「食料争奪戦」の様相”という報道があります。ロシアのウクライナ戦争では、第1の武器が軍事力、第2の武器がエネルギー(化石燃料)、そして第3の武器が食料だそうです。
世界の慢性的飢餓人口は、アフリカ・アジア・中南米などで8億人を超えています。世界人口の10%以上になります。これらの飢餓人口を抱える国々は、自国の食料を輸入に頼っています。これは、言葉を変えれば飢餓を輸入していることになります。(北朝鮮は唯一の例外)
ロシアのウクライナ侵攻によって、ロシアとウクライナからの食料輸出が滞っています。小麦の輸出でみると、ロシアは世界1位、ウクライナは5位でした。さらに、世界2位の米国も干ばつによる不作で輸出余力が乏しいそうです。このため、国連のグテーレス事務総長は「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす恐れがある」と強い懸念を表明しました。
こういう事態を受けて、日本などの先進国では、飢餓に苦しむ国に緊急の人道援助(食料援助)という話になります。ただ、気になるのは、食糧援助もまた飢餓の拡大につながっていないのか?という疑問です。
多くの場合、援助物資が届くのは貧しい国の都市であって、農村ではありません。農民は食料を生産しますが、それは政府に収奪されます。
まったく不本意なことですが、貧しい農民が飢えて、都市部のスラムに流れ込み、援助物資によって飢餓から逃れるという仕組みになっています。これによって、農村の食料生産力は更に衰えて、食料輸入にまた頼ることになります。
もう一つ不本意なことがあります。それが、1人1日当たりの消費熱量の違いです。
2020年に日本人の1人1日当たりの消費熱量は2,268.7㎉でした。高齢化の影響なのか、肥満を避けようとする健康意識の高まりなのか、前年より3%減っています。また、総人口も年に0.5%くらい減るので、日本人が必要とする食料は熱量ベースでは、近年減っています。
一方で、アメリカ人の1人1日当たりの消費熱量は約3,700㎉であり日本人の1.65倍です。フランス・イタリア・ドイツなどヨーロッパの先進国では3,300㎉を超えています。尚、ロシア人は、約2,650㎉だそうです。
だからどうだと、いうわけではないのですが、世界が「食料争奪戦」というニュースが、何となく腑に落ちません。