行き過ぎた円安?まぁ、それはそうなんですが。
円安が物価高を招いているのに対策をとらない岸田内閣はけしからん!と、立憲民主党は内閣不信任案を出しました。物価高で困っているのだから、減税をして、補助金をばら撒けということで、メチャメチャです。しかし、自民党も、減税はしないが、ばら撒きは徹底してやるので、同じくらいメチャメチャです。また、立憲も自民も、円安そのものをどうにかしようという考えはないので、議論にもなりません。
2022年5月26日現在の購買力平価(消費者物価)からみると、1ドル110円が妥当な為替レートとなります。簡単に言えば、アメリカで平均的に1ドルで買えるものは、日本では110円だということです。為替レートがこの時点で129円(今は134円)ですから、行き過ぎた円安という表現は正しいです。
要注意なのは、アメリカというとニューヨークやロサンゼルスのような都会(物価が高い)を思い浮かべがちですが、アメリカの大半は広大な田舎です。
購買力平価では、ビッグマック指数というのが有名です。日本のビッグマックの価格は390円でアメリカでは5.65ドルです。購買力平価では1ドルは69円になります。ガソリンは、アメリカで1ガロンが4.5ドルなので、ほぼ1リットルが1ドルです。日本では160円なので、1ドルは160円です。
さて、上のグラフをみてわかるように、日本では1985年以降はずっと円高でした。1985年からはじまった急激な円高(プラザ合意)に対抗するために、日本政府(中曽根首相・宮沢蔵相)と日銀(澄田総裁)は強力な内需拡大政策を推進します。いわゆるバブル景気の演出で、円高が加速します。結果的に、良いこともありましたが、残した爪痕も大きかったわけです。
バブル崩壊以降も、円高は長く続きました。この円高が海外からのヒト・モノ・カネの流入を邪魔して(逆に、日本からヒト・モノ・カネがアメリカや中国などアジアに流出した)、日本の国内産業の空洞化につながり、日本国民を苦しめ続けました。
2013年に、黒田東彦氏が日銀総裁となり、安倍首相とともに異次元の金融緩和政策を採用します。これによって、円高のトレンドが変わって、妥当な為替レートに近づいてきました。
日本産業に国内回帰の動きが見え始め、外貨建て物価が下がった日本に多くの観光客が押し寄せて爆買いするという事態になりました。日本経済が持ち直す、きっかけになりました。
さて、足下の状況は、長引いたコロナ騒動、ロシアのウクライナ侵攻を受けてのエネルギー・食糧危機、諸外国のインフレと金利の引き上げなどをうけて、急激な円安が進んでいます。個人的には、この40年間の動きにあらためて目を向けて、慌てることなく対策を考えていくことが肝要だと思います。
経営者としては、間違っても、マスコミの煽りや専門家然としてふるまうコメンテーターさんの発言に踊らされて、騒ぎ立てないことだと思います。
ただ、エネルギー価格は上がってきていますので、省エネには努めましょうね!