ロシアのウクライナ侵攻で、戦地に千羽鶴を送ろうとする行為が物議を醸しました。鶴はウクライナで最も愛されている鳥で、国のシンボルとされているそうです。
ところで、千羽鶴を慰安や祈願、見舞いなどに贈るという習慣は、それほど古いものではないようです。1955年に原爆症で亡くなった佐々木禎子さん(当時12歳)が、治癒の願いを込めて千羽の鶴を折ったということが、事実上の起源のように思われます。
「鶴は千年、亀は万年」鶴は長寿の象徴です。また、亀には申し訳ないですが、鶴はスマートで色白、立ち姿もシュッとしているうえ、飛んでいる姿も美しいです。日本でも古来から瑞鳥とされて、正倉院の宝物などにも描かれています。
折り鶴の起源ははっきりしないのですが、文献に見える最も古いのは、お馴染みの井原西鶴「好色一代男」だそうです。1682年のことです。但し、この折り鶴がどんな形だったかはわかりません。
形がわかる最初は、1717年発行の「けいせい折居鶴」だそうです。
千羽鶴のほうは、1797 年発行の「秘伝千羽鶴折形」で初めて登場します。この本は、世界最古の折紙の本です。
但し、ここで登場する千羽鶴は、今の千羽鶴ではなく「連鶴~つなぎ折り鶴」のことです。この本には49種類の千羽鶴(連鶴)が紹介されています。
この千羽鶴は、伊勢国桑名の長円寺の住職だった義道一円という方が考案したものです。現在は、桑名市の無形文化財に指定されています。
戻って、今の折り鶴を千羽繋ぐという千羽鶴です。原爆少女の佐々木偵子さんが始めた千羽鶴は、当時の原爆病院の入院者に広がりました。その後は映画などを通じて、平和の象徴となって、日本から世界に広がっていったようです。
千羽鶴(折り鶴)のよいところは、折っているときに、心理学でいうところの「フロー」の状態になることだそうです。フロー(flow)とは、そのときしていることに集中して、我を忘れて没入するような精神状態です。
丁寧に折り鶴をつくると、1つが2分半から3分くらいです。この時間が短すぎず長すぎず、ちょうどよいようです。ときを忘れて1時間折り続けると、20~25羽の折り鶴が完成します。それなりのボリュームになって、やりがいを強く感じます。
折り鶴は、綺麗な折り紙がなくても、お菓子の包み紙やセロファンのようなものでも折れます。ウクライナの方への支援には、千羽鶴を送るのではなく、折り鶴の折り方を紹介する方が良いのかも知れません。