山口県阿武町が「新型コロナ給付金4630万円を誤入金した」事件の素朴な疑問です。
阿武町が田口青年の口座に4630万円を誤入金したのは4月6日(水)。銀行がおかしいと気づいて阿武町に連絡して、町役場の職員が田口青年の自宅を訪問して事情を説明したのが4月8日(金)の午前。職員は、青年の入浴を待った後、宇部市の銀行まで返還手続きに連れて行く。銀行の窓口で青年は気が変わったと言いだして・・・というのが事の発端です。その後、1か月半に渡って、ワイドショーにネタ提供を続けています。ワイドショーで取り上げていないことを備忘のために書いておきます。
1つ目の疑問は、新型コロナ臨時給付金1世帯10万円を住民税非課税世帯に対して支給するということとの矛盾です。報道によると、田口青年(24歳)は、2020年10月に空き家バンクを利用して山口市から阿武町に移住し、ホームセンターで(勤務態度が真面目だったとか、月給は25万円くらいといった記事の信ぴょう性は不明ですが)正職員として勤務していたとあります。扶養者もいないのに、何故、青年は住民税非課税世帯だったのだろうか?
2つ目は、田口青年は阿武町に納める税金を滞納していたので、町が口座を差し押さえようとしたところ、オンラインカジノの決済代行業者から振込金額全額の返金があったということです。住民税非課税世帯が滞納する税金となると(空き家は月に2万5千円の家賃と報道されているので固定資産税ではなさそう)、唯一の可能性は2020年度の軽自動車税(1万800円)と思います。この金額で、全財産を差し押さえることが可能となると権力の濫用が恐ろしい。
また、このことで、税金の滞納がある世帯にも臨時給付金は支給されていることが分かったわけです。支給した後で差し押さえに動くより、滞納世帯には支給しない(留め置く)ことは出来ないものかと思います。
3つ目は疑問ではなく驚きです。阿武町は人口約2,950人です。その町で、住民税非課税世帯が463世帯もあるということです。世帯数約1340から、34.5%(全国平均は約22%)が住民税非課税世帯に該当します。高齢化率が50%を超えていることが原因ですが、町財政が厳しいことがわかります。誤送金した4630万円の価値は、大規模自治体より重いわけです。
最後は、疑問と併せて提案です。阿武町役場の職員数は59人だったと報道されています。特別職(教育と病院)を除けば50人には満たないと思います。連日、町役場の対応の悪さが指摘され、苦情が殺到しているようですが、全部で50人足らずの人材では、多重チェック体制の構築とか、デジタル化だとかは難しいのではないかと思います。特に、新型コロナのように臨時で特別で複雑な作業をおこなう能力を、町役場が維持するのは容易ではないようです。
上の地図にあるように、阿武町は平成の合併で旧阿武郡7町村のうち6町村が萩市と合併したなかで、唯一単独町政を選択しました。阿武町の周りは全て萩市です。田口青年が働いていたのも、萩市街とは反対側の島根県に隣接した田万川地区のお店です。逆に、阿武町内の事業所で働いている人の多くも萩市から通勤している人たちです。
この機会に、改めて萩市(人口約4万4000人・一般行政職389人)との合併を検討してもよいように思います。