m-SHELLモデルで事故を防ぐ~知床遊覧船事故

「m-SHELLモデル」、ヒューマンエラーの背後要因を洗い出すためのフレームワーク。

 

知床遊覧船の社長が記者会見で謝罪しました。乗員・乗客合せて26名という大規模遭難ですが、経営はごく小規模だったようです。社長は相続?によって複数の宿泊施設を経営する経営者となり、数年前にこの遊覧船会社を買収したようです。現時点で遊覧船会社の正社員(季節社員かも?)は、今回の事故を起こした船長さん1人だけだったのかもしれません。

 

m-SHELLモデル
m-SHELLモデル

現時点で、知床遊覧船の遭難について原因や対策を論じるのは、当に時期尚早です。今日は知床半島の反対側海上で3人が発見されました。残る12人の捜索が進むことを祈ります。

 

今回のような事故を防ぐために使われるフレームワークを確認しておきます。

キーエンスさんのwebサイト「ものづくり現場トピックス」にわかりやすい記事がありますので、参照してください。

 

m-SHELLは、management(管理)、Software(ソフトウェア)、Hardware(ハードウェア)、Environment(環境)、2つのLiveware(当事者/当事者以外)の頭文字を取ったものです。

原型の「SHELLモデル」は、航空業界で使われていたフレームワークです。海を含む交通関連で普及していって、その後はインフラから医療関連、近年では製造業や建設業でも活用されるようになりました。 

 

m-SHELLの中心のLが当事者(この場合は船長)で、もう一つのLが当事者以外(社長)です。甲板員がどちらかはよくわかりません。

Hのハードウェアは船舶(船体・エンジン・GPS・衛星電話)・事務所の無線アンテナなどに当たります。Sのソフトウェアでは運行管理規定が重要のようです。Eの環境では気象や海象について多くの記事がありますが、荒天に向かっていたことは確かです。

 

ヒューマンエラーが事故につながる場合には、➀危険(スレット:threat)が発生する・②人が認識せずにエラーをする・③不都合な状態を人が認識する・④事故が起こる。という段階を経ます。

 

今回の場合では、➀の危険がH:船の故障(船体の亀裂かエンジントラブル?)や通信の不調だけなのか、E:天候や潮流の急変だけなのか、あるいはその両方が複合しているのかなどは不明です。しかし、いずれにしても、L:当事者がこれに対応できることが必要です。

 

その関係性、L-H、L-E、L-S、L-L、m のそれぞれについて、予め確認しておくことが事故をおこさないことにつながります。

例えば、L-H:ハードのトラブルに対して代替できる機能を活用する、L-E:環境変化に対応する計画を持っている、L-S:航海を止めて引き返す明確な指標がある、L-L:陸上の管理者が適切に支援・指示する、そしてm:十分な技量を習熟や訓練によって持たせている・疲労や健康状態の管理をしっかりする。などが考えられます。

 

➁人が認識せずにエラーをする段階でも同じです。L-H:レーダーやGPSの機能が活用できる、L-E:船長が操縦に専念できる環境が維持できる、L-S:海域への習熟度を高める訓練を受けている、L-L:習熟者から支援を受けられる、m:船長が運航規程を完全に把握している。

 

③人が不都合な状態を認識して回避をしようとする段階では、L-H:操縦支援の装置や緊急通報装置を活用する、L-E:気象や海象情報を正確に予想する、L-S:僚船の支援が受けられる仕組みがある、L-L:甲板員が回避に協力できる、m:危険回避のために義務を放棄できる訓練をする。

最後の”m”は、法律やルールを破ってでも生命を守ることが必要な場合があるということです。例えば、操船が困難で気象海象の更なる悪化が予想されるなら、陸地に突っ込んでわざと座礁させるようなことです。